キャッチャーは投手の球を取るだけでなく、配球を考えたり、シフトの指示を送ったりと、グランドにおける監督の働きをしています。
Twitterでも有名なお股ニキさんの著書では、現代野球では「捕手の5ツール」と呼んで、大きく分けても5つの基本能力が求められると書かれていましたが、著書で紹介されている5ツールですが、
- バッティング
- フレーミング
- ブロッキング
- スローイング
- 野球IQ
と分けられていて、中でも「フレーミング」という言葉は最近注目され始めていて、とても重要なスキルになりつつあります。
ここでは、フレーミングとは何か??という基本知識から、フレーミングが上手な捕手は評価が高まるのはなぜなのか??という理由まで、まとめてみたいと思います。
野球におけるフレーミングの意味
フレーミングで検索すると、野球以外でも使われていて、心理学の世界でもフレーミングと呼ばれる技法があります。
心理学におけるフレーミングですが、プロスペクト理論を確立したダニエル・カーネマンとエイモス・トヴェルスキーによって発表さえた心理思考ですが、
心理学のフレーミング
問題や質問の仕方によって、意思決定の方法が異なる=解釈の枠組み(フレーム)が変わる。
というものです。
例えば、同じ質問をされたり、問題が合ったとしても、人それぞれの解釈(捉え方)や切り口が違うので答えは変わりますよね??
これと同じで、一つの問題も表現が違ったり、見せ方が変われば、大きく印象が変わることになります。
例を挙げると、
- 2019年の菅野投手は怪我をしたので13勝しか出来なかった。
- 2019年の菅野投手は怪我をしても13勝出来た。
- 丸佳浩選手の2019年は打率.300よりも低かった。
- 丸佳浩選手の2019年の打率は一年目にも関わらず.300近く残せた。
このように、意味は似ていますが、書き方によって印象はまるで変わってきますよね??この解約の枠組み=フレームと呼び、この時の心理作用を「フレーミング効果」と呼びます。
これに対して、野球におけるフレーミングですが、投手のボール球をストライクのように見せる技術の事をフレーミングと呼びます。
よく、捕手がキャッチングの瞬間にミットを動かしていると思いますが、あの動きは「ミットずらし」と呼ばれて、正確に言えばフレーミングではありませんので、こちらの動画をご覧下さい。
世界のフレーミングトップ8と紹介されていますが、びっくりするほど少しだけ動いているのが分かると思います。
ストライクゾーンは明確な基準が無いのは本当?
このフレーミングという技術が発展してきた背景には、ストライクゾーンが関係していますが、規則によると
「打者の肩の上部とユニフォームのズボンの上部との中間点に引いた水平のラインを上限とし、ひざ頭の下部のラインを下限とする本塁上の空間をいう。このストライクゾーンは打者が投球を打つための姿勢で決定されるべきである。」
となっていて、選手の体格、大きさ、打撃フォームによって違いがあります。
写真引用 ストライクゾーンの範囲の定義より
一応の定義はあるものの、審判によって判断基準は全く違ってきますし、それぞれの審判の特徴に合わせてミットを絶妙にストライクゾーンに見せるのが、キャッチャーの実力になってくるという事ですね。
フレーミングが上手だと評価が高まるのはなぜ?
ミットを大きく動かす「ミットずらし」は、実は審判から嫌われる行為で、特に国際試合になると敬遠されやすく、逆にストライクをボールとされたりする事もあります。
しかし、フレーミングはストライクとボールのギリギリのところをストライクとして取ってもらえるようになるので、投手からするととても助かります。
カウントが投手有利になるか、それとも打者有利になるか?は、配球にも影響しますので、特に若い投手を勇気づけるには必ず必要な技術と言っても過言ではないと思います。
フレーミングは、とても難しい技術で「捕る」という一つの行為だけで、審判にストライクをコールしてもらうのが重要なので、ミットを固定せずしっかりと捕りながらストライクゾーンに見せる技術のため、誰しもが簡単にできるわけではなく、上手い下手が出てきます。
が、今まではフレーミングだけで評価が上がるという事は聞かれなかったのですが、2019年オフに巨人の小林誠司選手のフレーミングが評価されました。
巨人の大塚副代表編成担当からは、契約更改の席で
フレーミングの数値もトラックマンの計測では、12球団トップと「見えない数値」も評価にした
というコメントもあり、フレーミングが世間でも注目されるようになってきました。
小林誠司選手のフレーミングに関するデータ
NPBで一番のフレーミングの評価を受けた小林選手ですが、一体どれだけの微妙な判定をストライクと見せることが出来たのか??このデータについてもDELTA社では計測しており、
写真引用 フレーミング評価の基本的な考え方(DELTA社)より
対象投球数が2769球に対し、77.8球をストライク判定したという事になります。
さらに特筆すべき小林選手の特徴が、
写真引用 ミットの移動距離別のフレーミング評価より
ミットを動かした距離をデータにしたものですが0に近ければ近いほど、動かしている距離が短いという事になりますが、小林選手はフレーミングが高いのにミットの距離は1.9と短いのです。
短いといのは、構えたところにほぼ投げ込んで来れば短くなりますが、ビタビタにコントロール良く投げてくる事は現実的にはありませんので、考えられる事としては逆球になっても、しっかりと投球コースを予測し、先回りする事でキャッチングをスムーズにしているのでは??と思います。
さらに、小林誠司選手は、コースによってフレーミングが苦手・・という事はなく、高低左右に関係なくストライク判定を獲っている事が、こちらのデータを見ても分かります。
写真引用 特徴的なフレーミング傾向を見せた捕手たちより
フレーミングが上手いキャッチャーは評価される?年俸とも連動する?
小林誠司選手の場合は、球団のコメントで評価に入っていると言われましたが、フレーミングが上手な選手の評価は、年俸にも反映されているのでしょうか?
先程のデータの中でフレーミング評価がプラスだった選手だけを対象に年俸を調べてみたところ
フレーミング数値 | 2018年年俸 | 2019年年俸 | |
小林誠司 | 77.8 | 6000万 | 1億円 |
田村龍弘 | 52.6 | 7200万 | 7000万 |
梅野隆太郎 | 47.0 | 5000万 | 1億円 |
加藤匠馬 | 30.9 | 550万 | 1800万 |
と田村龍弘選手以外は大幅アップです。
田村選手に関しては、2018年出場試合数143に対して、2019年は100と大幅に減っていますので、フレーミングが良くても残念ながら年俸ダウンです。
しかし、小林誠司選手も2018年出場試合数119に対して、2019年は92と減ってはいますので、一概にフレーミングだけで評価されているわけでは無いという事が言えます。
小林選手は詳しくこちらで書いてます。
→ 小林誠司の契約更改は複数年か?成績よりも経験とキャプテンシーを評価してほしい!
フレーミングだけで評価は高まらない
あくまで、フレーミングは捕手の基本能力5ツールの一つであって、全てではありませんので、全てのデータがトータル的に高い選手が評価されますし、また人気やチームでの存在感も評価に加わってきます。
そのため、国内FA権を取得する予定の小林誠司選手の場合は、囲い込みの意味もあってだと思いますので、田村選手と同じというわけではありませんが、今後は捕手力や年俸などの評価の対象に加わってくる可能性は十分にあるのでは無いでしょうか。
以上、今回は捕手の5ツールの一つ、フレーミングについて紹介してきましたが、小林誠司選手の価値が高い理由は、改めてデータからも読み取れましたし、巨人の正捕手という評価は当然という事も分かりました。
ただ、正捕手と堂々と名乗るためには、やはり出場試合数は8割はほしいところですから、120試合近くはスタメン出場出来るように頑張って欲しいところです。
炭谷銀仁朗、大城卓三選手といったライバルも強力ですが、今年はスガコバ完全復活で、最優秀バッテリー賞を取ってほしいと期待を込めて、フレーミングに関するまとめを終わります。
最後までお読みいただき、有難うございました。
巨人の捕手ライバルは強力です。