毎年開催されるドラフト会議は、プロ野球選手にとって初めて通る関門ですが、その年のドラフト戦略が未来のチームの根幹を作る事になります。
一年間ペナントレースを戦い抜いて出てきた弱点を的確に補強し、将来のチーム像を描くのに重要なドラフトは、その年の人気選手を獲得できるか?も重要ですが、下位指名でも戦力になりうる選手を獲得できるか?こそ、チームの底上げには重要です。
まもなく春季キャンプを迎えますが、昨年のドラフト選手の中から何人の選手が一軍入りし、活躍するのか?注目ですが、今回は巨人の2015年ドラフト戦略はどうだったのか?
を振り返り、巨人のドラフト戦略を考えたいと思います。
2015年読売巨人軍 支配下登録選手
ドラフト戦略を振り返る前に、2015年の支配下登録選手の成績を簡単に振り返りたいと思います。
チーム全体としては、
リーグ順位 | 2位 |
チーム打率 | .243(セ・リーグ6位) |
チーム本塁打 | 98本(セ・リーグ4位) |
チーム盗塁 | 99個(セ・リーグ1位) |
チームOPS | .667(長打率.354、出塁率.313) |
チーム防御率 | 2.78(セ・リーグ1位) |
と、投高打低の傾向がはっきりしていました。
チームの4連覇が途切れた事もあり、この年に責任を取る形で原辰徳監督が辞任し、高橋由伸氏が急遽監督になるため引退する事になり、バタバタした印象です。
2015年巨人の主な打撃成績
では、個人成績の方を見ていきたいのですが、主な打撃成績では
試合数 | 本塁打 | 打点 | 盗塁 | 四球 | 三振 | 打率 | 長打率 | 出塁率 | OPS | |
アンダーソン | 83 | 7 | 31 | 1 | 21 | 37 | .252 | .402 | .327 | .729 |
相川 亮二 | 40 | 4 | 17 | 1 | 12 | 16 | .313 | .505 | .384 | .889 |
阿部 慎之助 | 111 | 15 | 47 | 0 | 64 | 84 | .242 | .414 | .37 | .784 |
井端 弘和 | 98 | 1 | 19 | 3 | 37 | 36 | .234 | .279 | .331 | .610 |
隠善 智也 | 3 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 1.000 | 1.000 | 1.000 | 2.000 |
大田 泰示 | 60 | 1 | 3 | 3 | 7 | 39 | .277 | .354 | .319 | .673 |
岡本 和真 | 17 | 1 | 4 | 2 | 2 | 4 | .214 | .321 | .29 | .611 |
カステヤーノス | 6 | 0 | 1 | 0 | 2 | 11 | .1000 | .150 | .182 | .332 |
片岡 治大 | 113 | 10 | 36 | 21 | 25 | 36 | .244 | .374 | .299 | .673 |
加藤 健 | 35 | 0 | 3 | 0 | 4 | 24 | .24 | .280 | .272 | .552 |
亀井 善行 | 109 | 6 | 35 | 8 | 40 | 59 | .272 | .374 | .338 | .712 |
金城 龍彦 | 36 | 1 | 10 | 1 | 3 | 11 | .233 | .300 | .266 | .566 |
小林 誠司 | 70 | 2 | 13 | 2 | 19 | 39 | .226 | .294 | .312 | .606 |
坂口 真規 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | .000 | .000 | .000 | .000 |
坂本 勇人 | 130 | 12 | 68 | 10 | 65 | 79 | .269 | .401 | .353 | .754 |
實松 一成 | 22 | 1 | 3 | 1 | 2 | 9 | .182 | .273 | .270 | .543 |
鈴木 尚広 | 65 | 1 | 4 | 10 | 2 | 4 | .294 | .529 | .400 | .929 |
セペダ | 20 | 0 | 1 | 0 | 7 | 6 | .000 | .000 | .250 | .250 |
高橋 由伸 | 77 | 5 | 21 | 2 | 20 | 39 | .278 | .429 | .386 | .815 |
立岡 宗一郎 | 91 | 0 | 14 | 16 | 18 | 61 | .304 | .348 | .343 | .691 |
長野 久義 | 130 | 15 | 52 | 3 | 34 | 81 | .251 | .415 | .310 | .725 |
辻 東倫 | 2 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | .000 | .000 | .250 | .250 |
寺内 崇幸 | 31 | 0 | 3 | 4 | 0 | 6 | .250 | .250 | .28 | .530 |
堂上 剛裕 | 59 | 3 | 13 | 0 | 4 | 20 | .276 | .480 | .301 | .781 |
中井 大介 | 29 | 0 | 2 | 0 | 2 | 9 | .209 | .233 | .261 | .494 |
橋本 到 | 68 | 1 | 10 | 4 | 9 | 35 | .219 | .336 | .270 | .606 |
フランシスコ | 5 | 0 | 1 | 0 | 0 | 11 | .167 | .167 | .167 | .334 |
松本 哲也 | 44 | 0 | 0 | 3 | 2 | 10 | .147 | .176 | .194 | .370 |
村田 修一 | 103 | 12 | 39 | 1 | 28 | 65 | .236 | .373 | .310 | .683 |
矢野 謙次 | 8 | 0 | 1 | 0 | 0 | 3 | .071 | .071 | .071 | .142 |
吉川 大幾 | 47 | 0 | 4 | 3 | 2 | 15 | .250 | .375 | .276 | .651 |
中枢と呼ばれた、阿部慎之助、坂本勇人、村田修一、長野久義選手それぞれが、本塁打20本以下、センターのレギュラーに立岡宗一郎が定着し体裁を取りましたが、多くの選手が前年度から大きく成績を落とす結果に。
2015年巨人の主な投手成績
一方、投手陣に目を向けると、
登板 | 勝利 | 敗北 | セーブ | HP | 四球 | 三振 | 防御率 | |
内海 哲也 | 5 | 2 | 1 | 0 | 0 | 6 | 10 | 5.01 |
大竹 寛 | 11 | 3 | 4 | 0 | 0 | 11 | 35 | 3.21 |
笠原 将生 | 20 | 0 | 0 | 0 | 1 | 11 | 18 | 6.16 |
香月 良太 | 14 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 5 | 3.77 |
小山 雄輝 | 7 | 0 | 1 | 1 | 2 | 7 | 10 | 4.02 |
澤村 拓一 | 60 | 7 | 3 | 36 | 10 | 21 | 60 | 1.32 |
菅野 智之 | 25 | 10 | 11 | 0 | 0 | 41 | 126 | 1.91 |
杉内 俊哉 | 17 | 6 | 6 | 0 | 0 | 35 | 93 | 3.95 |
高木 京介 | 33 | 1 | 0 | 0 | 2 | 13 | 43 | 2.20 |
高木 勇人 | 26 | 9 | 10 | 0 | 0 | 47 | 131 | 3.19 |
田口 麗斗 | 13 | 3 | 5 | 0 | 0 | 26 | 64 | 2.71 |
田原 誠次 | 18 | 1 | 0 | 0 | 5 | 9 | 18 | 1.00 |
土田 瑞起 | 11 | 1 | 0 | 0 | 1 | 6 | 13 | 6.39 |
戸根 千明 | 46 | 1 | 1 | 1 | 6 | 18 | 39 | 2.88 |
西村 健太朗 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 9.00 |
ポレダ | 24 | 8 | 8 | 0 | 0 | 46 | 101 | 2.94 |
マイコラス | 21 | 13 | 3 | 0 | 0 | 23 | 107 | 1.92 |
マシソン | 63 | 3 | 8 | 2 | 31 | 21 | 55 | 2.62 |
宮國 椋丞 | 39 | 3 | 1 | 1 | 8 | 15 | 28 | 2.94 |
メンドーサ | 2 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 3 | 3.00 |
矢貫 俊之 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 2 | 13.5 |
山口 鉄也 | 60 | 4 | 5 | 2 | 33 | 15 | 31 | 2.73 |
先発投手の二桁勝利は菅野智之、マイコラスのみ、続くのが高木勇人選手で9勝、ポレダ8勝と続き、左エース内海哲也、FA移籍の杉内俊哉、大竹寛投手は勝利数を伸ばすことが出来ませんでした。
また、リリーフ陣は山口鉄也、マシソンは健在も、西村健太朗の代わりに澤村拓一選手が抑えを務め、リリーフを固めるも、3人で16敗するなど、リリーフへの負担も大きなシーズンでした。
投打共に、3連覇を果たした時の中心にいた選手たちがピークを過ぎており、新しい世代の台頭が望まれるところでの監督交代、高橋由伸監督からすると、チーム構想を考える間もなく、急遽お鉢が回ってきたという印象でしょう。
巨人のドラフトに影響を与えた野球賭博問題
高橋由伸監督にとって、さらに不幸だったのが2015年10月に「野球賭博問題」が発覚、ドラフト戦略で思い描いていた上位指名は「レギュラー野手」という事もあって、巨人は投手オコエ瑠偉選手を指名すると思われましたが・・
今回の賭博事件で福田聡志、笠原将生、松本竜也の3投手を解雇する事になったので、先発、リリーフ共に投手陣の立て直しが必要となった事で上位候補を即戦力投手に切り替える事になりました。
2015年ドラフト上位候補の即戦力投手
では、2015年のドラフトを振り返ると、上位候補に並ぶ即戦力投手の顔ぶれはどんな選手がいたのか?各球団のドラフト上位を見ると、
球団名 | 選手名 |
東京ヤクルトスワローズ | 原樹理 |
福岡ソフトバンクホークス | 高橋純平 |
北海道日本ハムファイターズ | 上原健太 |
広島東洋カープ | 岡田明丈 |
西武ライオンズ | 多和田真三郎 |
中日ドラゴンズ | 小笠原慎之介 |
横浜DeNAベイスターズ | 今永昇太 |
と各球団の戦力になっている選手がズラリと顔を揃えており、投手豊作の年ですので、即戦力となる投手は重複覚悟で獲得する事も出来ましたが、巨人が指名したのが立命館大学の桜井俊貴投手でした。
2015年読売巨人のドラフトと過去成績を振り返る
巨人のドラフト戦略は、1位こそ即戦力投手の獲得でしたが、2位以降を見ていくと、元々野手の高齢化が課題になっていた上に高橋由伸選手の引退・・
と一気に野手陣の弱体化が浮き彫りになりましたし。
また、2014年ドラフト1位に岡本和真選手を獲得していたので外野手を補強しなければいけない状況でしたので2位以下は野手を中心にした指名となり、
選手名 | 出身校 | |
1位 | 桜井俊貴 | 立命館大学 投手 |
2位 | 重信慎之介 | 早稲田大学 外野手 |
3位 | 与那原大剛 | 普天間高校 投手 |
4位 | 宇佐見真吾 | 城西国際大 捕手 |
5位 | 山本泰寛 | 慶応大学 内野手 |
6位 | 巽大介 | 岩倉高 投手 |
7位 | 中川皓大 | 東海大 投手 |
8位 | 松崎啄也 | 日本製紙石巻 外野手 |
育成ドラフトでは、
選手名 | 出身 | |
1位 | 増田大輝 | 徳島インディゴソックス 二塁手 |
2位 | 小林 大誠 | 武蔵ヒートベアーズ 捕手 |
3位 | 松澤 裕介 | 香川オリーブガイナーズ 外野手 |
4位 | 田島 洸成 | 武蔵ヒートベアーズ 遊撃手 |
5位 | 大竹 秀義 | 武蔵ヒートベアーズ 投手 |
6位 | 山下 篤郎 | 鎮西高 投手 |
7位 | 矢島 陽平 | 武蔵ヒートベアーズ 投手 |
8位 | 長谷川 潤 | 石川ミリオンスターズ 投手 |
と合計16名の選手を獲得し、育成の巨人復活に向け、動き始めたドラフト戦略でした。
2019年の各選手の主な成績
入団後4年を経過しましたが、各選手高橋由伸監督の元、徐々に実力をつけてきていますが辞任をした後の2019年に多くの選手が開花し、以下のような成績を残しました。
投手では、
登板 | 勝利 | 敗北 | セーブ | HP | 防御率 | ||
1位 | 桜井 俊貴 | 29 | 8 | 6 | 0 | 1 | 4.32 |
7位 | 中川 皓太 | 67 | 4 | 3 | 16 | 21 | 2.37 |
ドラフト1位の桜井投手がリリーフ、先発ローテーションとして活躍し8勝をあげ、ドラフト7位の中川選手は67登板で16セーブ、21HPとリリーフの柱へと成長し、2020年は投手陣の柱へと成長する事が期待されています。
野手では、
試合数 | 安打数 | 本塁打 | 打点 | 盗塁 | 打率 | 長打率 | 出塁率 | OPS | ||
2位 | 重信 慎之介 | 106 | 42 | 2 | 16 | 14 | .266 | .373 | .308 | .681 |
4位 | 宇佐見 真吾 | 3 | 1 | 0 | 0 | 0 | .250 | .250 | .250 | .500 |
5位 | 山本 泰寛 | 92 | 41 | 2 | 10 | 2 | .232 | .339 | .340 | .679 |
2位の重信選手は準レギュラー、守備固め、代走として活躍し2桁盗塁をマーク、2020年はライトのレギュラー争いに加わりそうです。
4位の宇佐見選手は北海道日本ハムファイターズにトレードで移籍し、日本ハムの正捕手争いに加わる活躍で、今年は飛躍が期待されそうです。
5位の山本選手はしぶとい打撃と高い守備力で一時はレギュラーとして起用もされていましたが、途中失速しレギュラーになれませんでしたので、2020年はレギュラー取りなるか?注目です。
さらに、育成選手からは
試合数 | 安打数 | 本塁打 | 打点 | 盗塁 | 打率 | 長打率 | 出塁率 | OPS | |
増田 大輝 | 75 | 10 | 0 | 6 | 15 | .200 | .320 | .286 | .606 |
増田選手が代走の切り札として活躍、チーム一の15盗塁をマークし、2020年はセカンドのレギュラー取りに挑みます。
その他の選手については、
選手名 | 現在 | |
3位 | 与那原大剛 | 手術により育成契約も、春季キャンプ1軍メンバー入りで支配下登録も可能性あり。 |
6位 | 巽大介 | 育成契約 |
8位 | 松崎啄也 | 自由契約 |
育成契約は
選手名 | 現在 | |
2位 | 小林 大誠 | 自由契約 |
3位 | 松澤 裕介 | 入団せず |
4位 | 田島 洸成 | 育成契約 |
5位 | 大竹 秀義 | 自由契約 |
6位 | 山下 篤郎 | 育成契約 |
7位 | 矢島 陽平 | 自由契約 |
8位 | 長谷川 潤 | 自由契約 |
となり、残っているのは4名になりますが、2019年に6名も一気にブレイクしましたので、チャンスは十分あると思いますので、頑張ってほしいですね!
2015年読売巨人軍ドラフトの本当の評価は?
2015年ドラフト会議後、各紙やジャーナリストの評価が行われる中で、巨人のドラフト評価は「将来性が不透明」とされて、特に桜井投手は大学4年生で急激に成長した投手ですが、実績も乏しいことから指名に疑問を持たれる事もありましたが・・
ある元スカウトの方いわく
「ドラフトは結果がすべて。5年後に答えがある。私も含めスカウトの目なんて所詮、節穴なんだ」
と言っていた通り、5年後に答え合わせをする事になると考えれば、ちょうど2019年は一つの答え合わせの年になります。
巨人で言えば、16名(支配下登録8名)のうち6名(支配下登録5名)が1軍で活躍しています。
支配下登録の選手確率だけ見れば、62.5%の選手が一軍入りした事になるという事で、近年稀に見る確率です。
巨人は生え抜き選手に冷たい、チャンスがない・・・
と言われる事もありますが、そんな事もなくて結果さえ伴えば、起用もされますし、結果を出せば他の球団よりも年俸アップ幅は大きいですから、少ないチャンスをモノにできるか?の方が大事だと思います。
今後、年度別のドラフト戦略を振り返る記事も、ボチボチ上げていこうと思いますが、振り返れば2015年ドラフトは成功だったと言われるように、2020年も引き続き結果を残してほしいと願っています。
各選手の詳細なデータなどまとめています