2018年中継ぎで一軍帯同、2019年になりリリーフ登板から先発を勝ち取り、見事にローテーションピッチャーまで登りつめた桜井俊貴選手。
先発抜擢された交流戦からオールスター前までのピッチングは、まさに右のエースと呼んでも良いくらい安定した投球で、希望が持てる内容でした。
しかし、ペナント終盤につれて制球が甘く早い回から崩れる事が多く見られたため、2020年以降は一年間ペナントを乗り切るだけの体力と制球を身につけて二桁勝利を目指してほしいと願っております。
他球団のドラフト1位が結果を出す中、ファーム生活が長く苦しんできただけに、今年の活躍はGファンとしては嬉しいところですが、来季以降も勝ち続けるために桜井俊貴選手に何が必要か?
過去の成績や球種データなどを見ながら考察したいと思います。
桜井俊貴投手のプロフィールと成績
まず最初に桜井俊貴選手のプロフィールですが、
出身校 | 兵庫県立北須磨高校→立命館大学 |
身長 | 181センチ |
体重 | 88キロ |
高校は、地元の甲子園出場もある私立高からの推薦もある中で、「途中まで勉強を頑張っていたし、野球だけに切り替えたら後悔するなと。高校は勉強で入って勝負しようと思った」と、文武両道を貫き、公立校へ。
野球にも打ち込み、2年夏には兵庫県大会でベスト16入りと活躍するも、ドラフトとは無縁でしたが、スポーツ推薦で立命館大学へ進学する事に。
関西リーグでは1年から活躍し、リーグ通算56試合に登板、28勝8敗、防御率1.10、通算306奪三振と圧倒的な数字を残した事で、プロからの評価も高まりドラフト候補へ。
事前のスカウト評では、桜井投手の評価はほぼ出てこず、同期だと
- 高橋純平
- 原樹理
- 上原健太
- 多和田真三郎
- 岡田明丈
- 小笠原慎之介
- 今永昇太
と前評判の高いピッチャーも数多く揃っていましたので、ドラフト会議で桜井投手が呼ばれた時も「誰??」という感じでした。
また、野手でも
- 平沢大河
- オコエ瑠偉
- 高山俊
- 吉田正尚
とこちらもレベルの高い野手が多く、振り返れば2015年のドラフトは豊作だった事が分かります。
桜井俊貴投手の評価の高さは怪我をしない強さだった
桜井投手ですが、公立の星と呼ばれた高校時代から、実は評価が高かったようですが、桜井選手自身が大学に進学し、体力をつけてプロの身体を作るという目的もあって進学したところからも、「頭が良い投手」でした。
さらに、大学進学後も順調に成長し、結果を残した事で、スカウト評価も上がったわけですが、さらに評価されたのが「体力面」だったそうです。
ドラフト前の関西大とのリーグ優勝決定試合で、延長14回をひとりで投げ抜き、206球、1失点完投勝利と結果を出した事が、山下スカウトも評価し、ドラフト一位を固めています。
たしかに、他のドラフト一位選手の活躍からすると、4年かかっていますので、遅咲きと言えば遅咲きですが・・・
一年目の初先発でいきなり肘を怪我したり、背番号の変更を受けたり、東大とのプロ・大学交流戦で6回7失点と結果が出なかったり・・
と様々な苦労を乗り越えての2019年の結果ですから、スカウトもきっと胸をなでおろしたはずです。
桜井俊貴投手の主な成績
桜井投手の入団後の成績ですが、
年度 | 登板 | 勝利 | 敗北 | 勝率 | 投球回 | 四球 | 三振 | 自責点 | 防御率 | FIP | WHIP |
2016 | 1 | 0 | 1 | .000 | 4 | 1 | 5 | 4 | 8.31 | ||
2017 | 19 | 0 | 1 | .000 | 27 | 15 | 16 | 17 | 5.67 | 4.79 | 1.59 |
2019 | 29 | 8 | 6 | .571 | 108 | 42 | 82 | 52 | 4.32 | 4.32 | 1.39 |
2017年は好不調の波が大きいですが、中継ぎで一軍に19試合登板も、2018年は登板機会無しです。
この数字から見れるのが、「与四球率」と「奪三振率」です。
2019年の与四球率を計算すると3.50、奪三振率は6.83、与四球率の平均が3.20のため、、少し低めですが、奪三振は9.00を超えないので被打率が高い傾向にあります。
そのため、防御率は4点台から改善出来なかったのかな??と思います。
ちなみに、2018年のファームでは、
登板 | 勝利 | 敗北 | 四球 | 三振 | 防御率 | |
2018 | 18 | 4 | 0 | 20 | 54 | 2.69 |
数字だけ見れば1軍に呼ばれても良さそうなのですが、登板なしで終えているところを見ると、首脳陣からの評価が良くなかったのでしょうね。
菅野智之投手との自主トレが覚醒のきっかけ?
2017年オフから2年続けて、絶対的エースの菅野智之選手に付いて自主トレをしていますが、ここでグラブを持つ左腕の使い方や、ボールのリリースまで力みを無くすなど、細かい投球ファームを変えています。
思えば、桜井投手は高校が公立、大学は名門の関西リーグと言えど、恵まれたコーチングを受ける事がなかったのが、プロ入り後に結果として出たのかも知れませんね。
入団後も、自分に合った指導法を見つけられず、迷走してしまった事で、4年という歳月がかかった可能性がありますが・・・
それでも持ち前の真面目さと、地道な努力が開花するための「プロの体力」は備えていた事で、怪我なく1年乗り切れていますので、プロで努力した道のりは決して間違いではなかったという事ですね。
桜井俊貴投手の球種は?
次に桜井投手の球種と平均球速、使用割合ですが、
平均球速 | 使用割合 | |
ストレート | 144キロ | 46.93% |
カットボール | 17.40% | |
チェンジアップ | 13.83% | |
カーブ | 21.57% | |
フォーク | 0.05% | |
スライダー | 0.22% |
(平均球速はデータを見つけ次第、更新します。)
上記のとおり、カーブ、カットボール、チェンジアップを上手く混ぜ込んで、打ち取っていきます。
この中で入団時にはスライダーも多く使っていて評価が高かったのですが、カーブと球速が変わらないので、使わなくなったようです。
余談ですが、この事を知った時に、ふと上原浩治選手の事を思い出したしたのですが、上原選手も入団一年目にフォークを覚えて数種類のフォークを操って20勝と新人王を獲得していますが、元々はスライダーピッチャーだったそうです。
しかし、フォークとストレートのコンビネーションで打ち取る術を覚えてからは、スライダーを封印し、スライダーの投げ方すら忘れたそうです・・・
大学時代にいくら評価された球種でも、プロで通用しなければ思い切って封印する、桜井投手も思い切った選択だったと思いますが、結果的にカーブとストレートの球速差がはっきりした事で、メリハリある投球が出来るようになったのが、今年飛躍した理由の一つだと思います。
原監督からも、
「メリハリがあって、正面から見ていても、横から見ていても球種、バッターサイドから見ると、狙い球も絞りづらい」
とコメントされているように、狙い球を絞らせない投球が、オールスター戦前までは出来ていたのは、筆者も観ていて感じました。
筆者のあげる、今年の桜井選手のベストピッチングはオリックスとの交流戦。
6回2失点ながら、10奪三振と内容も素晴らしかった試合です。
桜井俊貴選手のストレートはシュート回転で危ない
ストレートだけでなく、変化球を上手く使い分け、メリハリの効いた投球術が出来るのが桜井選手の持ち味とは言いましたが、気になるのが「ストレートはシュート回転する」という点。
前半戦は、フォームのバランスも良かったからか、シュート回転を上手く利用してナチュラルにバックドアしてアウトローに投げていましたが、終盤になるにつれて真ん中に入る事が多く、甘いストレートが増えていました。
実際に球種別のデータを確認してみると、
球種 | 被打率 | 被本 | 被四死 | 奪三振 | 空振率 | 見逃率 |
ストレート | .320 | 7 | 21 | 30 | 4.09% | 19.06% |
カットボール | .280 | 2 | 7 | 12 | 8.52% | 15.46% |
チェンジアップ | .232 | 2 | 6 | 15 | 15.87% | 9.13% |
カーブ | .169 | 1 | 8 | 25 | 13.49% | 24.68% |
フォーク | .000 | 0 | 0 | 0 | 0.00% | 0.00% |
スライダー | .000 | 0 | 0 | 0 | 25.00% | 25.00% |
ストレートの被打率と被本塁打数・・・かなり高めです。
巨人の山口俊選手の場合、2019年だと
球種 | 被打率 | 被本 | 被四死 | 奪三振 | 空振率 | 見逃率 |
ストレート | .287 | 7 | 31 | 47 | 6.02% | 22.60% |
フォーク | .158 | 1 | 15 | 124 | 25.29% | 4.85% |
スライダー | .222 | 0 | 12 | 14 | 15.30% | 17.04% |
カーブ | .320 | 0 | 1 | 2 | 9.29% | 27.43% |
シュート | .500 | 0 | 0 | 1 | 0.00% | 50.00% |
チェンジアップ | .000 | 0 | 0 | 0 | 25.00% | 0.00% |
ストレート被打率が、.300以下、見逃し率22%超えです。
防御率1位の大野雄大選手に至っては、被打率.203、見逃し率21%超えです。
今年の桜井選手は、
- 鬼気迫る鬼のような顔
- ペドロ・マルティネスを参考にした躍動感溢れるフォーム
でストレートでどんどん押す強気なピッチングスタイルでしたので、ストレートの被打率をもう少し抑えていかないと、被弾する確率が高まるので、見ている方も「危ない・・」と感じてしまうと思います。
2019年秋季キャンプでは投手キャプテンに
2019年の秋季キャンプでは、桜井投手はキャプテンに任命されていましたが、
「カーブを進化させてパワーカーブにする」
と宣言していました。
現代野球では、球速の速い変化球を好む傾向がありますので、スライダー、カーブ、チェンジアップ、フォークが高速化してきています。
プレミア12を見ていたら、オリックスの山本由伸選手なんて、フォークで149キロを投げたりしますので・・・
日本人の変化球も高速化してきています。
本当にヤバいですよね、このフォークの落差でスピードは・・・
桜井選手はカーブなので120キロ後半のカーブを投げたいと思っているのでしょうが、筆者的には今のカーブは江川卓さんを彷彿させるような縦に大きく割れるカーブで好きです。
桜井俊貴投手の良さはピッチトンネルを使える点
ペナントレース中に桜井投手が打ち込まれた時に、
「ピッチトンネルの中から直球、カット、シュート、カーブと。直球も150㌔近い真っすぐがあったんだけど今日はちょっとね。本人が変わろとしてるのか、変化球投手になろうとしてるのか聞いてみたいね」
原監督がこのようなコメントをしていたのが、筆者は印象的だったんですけど、首脳陣もストレートで押すピッチングを期待していますし、ピットトンネルから的を絞らせないピッチングをしなければ、通用しないのです・・
このコメントに対して、激しく同意ですが、変化球で交わしている時の桜井投手は、ピッチングに幅がなくカウントが整わず苦しんでいます。
どの投手も同じかも知れませんが、桜井投手の場合は、ストレートがシュート回転するので、余計に変化球の使い所が問われるのでは無いかと思います。
桜井俊貴投手の年俸と背番号推移
次に桜井投手の年俸と背番号の推移ですが、
年 | 年俸(推定) | 背番号 |
2020年 | 3000万円 | 35 |
2019年 | 1000万円 | 35 |
2018年 | 1200万円 | 36 |
2017年 | 1200万円 | 36 |
2016年 | 1500万円 | 21 |
入団時は21番と先発ローテーションを期待されていましたが、1年で36番へ変更されるドラフト1位とは思えない処遇・・
2019年には西村健太朗さんも背負った右のリリーフエースを目指してほしいという願いも込めて、35へと背番号が変更されました。
西村氏の魂も乗り移ったのか・・今年は素晴らしい結果を残し、契約更改では3倍の3000万と飛躍のきっかけを掴んでいます。
しかし、筆者的には、「まだまだ覚醒は先」だと思っていて、持っているポテンシャルはこんなものではないと思っています。
一つ一つの球種の精度は、けっして高いとは思わないですが、ピッチトンネルを通って、的を絞らせない投球術は、どこか老獪さを感じますし、長く活躍できる要素ではないか?と期待しています。
2019年掴んだチャンスときっかけを活かすにも、2020年は必ず二桁勝利を挙げて欲しいですね。
オフには結婚も発表していましたし、今までのように一人ではなくこれからは家族も背負って一家の大黒柱となっていく必要がありますので、是非とも頑張って巨人のローテーションピッチャーに成長して下さいね。
若手投手で投手王国の礎を築いてほしい!