楽天イーグルスの正捕手、嶋基宏選手が大幅減俸を受け、実質上の戦力外通告を受け退団する事が決まっていますが、今嶋選手を巡り、複数球団で争奪戦が繰り広げられる予想です。
今、獲得に名乗りをあげているのは、中日ドラゴンズ、千葉ロッテマリーンズ、オリックスバファローズ、ヤクルトスワローズの4球団ですが、中でもセ・リーグの中日とヤクルトが有力では??とも言われています。
近年、盗塁阻止率も下がってきており、2019年は打撃、守備、出場機会すべての数字がワーストというところで、正捕手としての起用というより、バックアップと準レギュラーとしての獲得というのが現実的なところでしょうか。
捕手は他のポジションと違って、育成に時間がかかるポジションで、若手にシフトした時には、時間がかかる事覚悟で、出場機会を充てていきます。
西武ライオンズの森友哉選手は、炭谷銀仁朗(現読売ジャイアンツ)から出場機会を徐々に奪い、2019年はゴールデングラブ賞には届かないもののパ・リーグ3位の投票を得るまで成長しています。
若手の成長には、ベテランとの競争やサポートが欠かせないのは、どこのポジションも同じですが、捕手の場合はより重要な役割を担う事になるので、嶋選手にも期待がかかるところでしょう。
ここでは、そんな嶋基宏選手の評価がなぜ高いのか?数字で分かる部分と数字で見えない部分とに分けて考察していきたいと思います。
嶋基宏 経歴と成績
まずはじめに、嶋選手の経歴と主な成績を確認しましょう。
出身校(高校、大学) | 中京大中京高校、国学院大学 |
身長 | 179cm |
体重 | 82キロ |
2006年の大学生社会人ドラフトで3位の指名を受けて楽天イーグルス入り、一年目から正捕手として活躍。当時監督だった野村克也監督から徹底的な英才教育を施され、リーグを代表する捕手へ成長。
2013年の東北大震災の時に、「見せましょう、野球の底力を!」というスピーチは、嶋選手のリーダーシップが垣間見えた瞬間でしたし、あのどん底から見せた楽天イーグルスの快進撃、そして日本シリーズでの巨人との死闘は・・
今でも忘れられない名試合です。
続いて、主な成績ですが、
年度 | 試合 | 安打 | 本塁打 | 打点 | 盗塁 | 四球 | 三振 | 打率 |
2007 | 125 | 57 | 2 | 16 | 3 | 20 | 74 | 0.183 |
2008 | 85 | 45 | 0 | 19 | 4 | 16 | 40 | 0.23 |
2009 | 106 | 58 | 1 | 14 | 1 | 22 | 55 | 0.233 |
2010 | 127 | 133 | 3 | 43 | 9 | 45 | 90 | 0.315 |
2011 | 129 | 81 | 2 | 28 | 7 | 30 | 85 | 0.224 |
2012 | 91 | 77 | 1 | 8 | 3 | 33 | 51 | 0.291 |
2013 | 134 | 115 | 4 | 48 | 3 | 39 | 92 | 0.257 |
2014 | 126 | 92 | 1 | 36 | 6 | 65 | 84 | 0.263 |
2015 | 117 | 74 | 4 | 18 | 6 | 60 | 69 | 0.219 |
2016 | 80 | 54 | 2 | 17 | 4 | 40 | 43 | 0.271 |
2017 | 112 | 56 | 3 | 28 | 2 | 57 | 62 | 0.199 |
2018 | 113 | 65 | 0 | 21 | 2 | 30 | 89 | 0.206 |
2019 | 57 | 23 | 3 | 15 | 0 | 13 | 20 | 0.209 |
2010年、2012年は、打率も3割近くというところで、よく打っていますが、基本的にはバッティングは得意では無く、四球もあまり取れない、三振の多いというところで下位打線を打つ事が多い。
では守備面ではどうか?という事で捕手の数字では守備率、捕逸、盗塁阻止率の3つを2017年までのデータで見つける事が出来ましたので確認してみると、
年度 | 守備率 | 捕逸 | 盗塁阻止率 |
2007年 | .991 | 13 | .365 |
2008年 | .991 | 7 | .357 |
2009年 | .996 | 2 | .286 |
2010年 | .991 | 6 | .231 |
2011年 | .988 | 7 | .228 |
2012年 | .997 | 1 | .182 |
2013年 | .997 | 10 | .333 |
2014年 | .994 | 6 | .245 |
2015年 | .993 | 9 | .245 |
2016年 | .995 | 9 | .194 |
2017年 | .996 | 3 | .289 |
2018年の盗塁阻止率は.312と3割を超えてはいましたが、2019年には一度も刺せない時期もあるなど、絶不調に陥りました。
ちなみに、ベストナインとゴールデングローブ賞は、2010年、2013年の2回獲得しています。
守備率は高い数字で推移
それぞれの数字を見ていくのに、往年の名選手との比較がわかりやすいだろう・・というところで、最初に守備率についてですが、
- 伊東勤現中日コーチ 生涯守備率.995
- 城島健司元阪神タイガース 生涯守備率.993
お二人ともゴールデングラブ賞は14回ずつ獲得しているという事なので、守備率だけでなく名捕手の条件に守備率の高さは加わりそうです。
ゴールデングラブ賞の数では遠く及びませんが、数値的には嶋選手の「守備率は高い数字」という印象です。
捕逸は多い印象?
次に捕逸ですが、守備率にも関わってきますが、パスボールをしない事はピッチャーの信用を得るのに重要な能力のため、捕逸が少なければ少ないほど良いのは当たり前なのですが、嶋選手は2桁記録する事もあり、ちょっと多いかもしれません。
しかし、この数字は所属球団のピッチャーの精度(暴投数)にも影響すると思いますので、一概に比較するのは難しいかもしれませんね。
盗塁阻止率はかなり低い
次に盗塁阻止率ですが、これもピッチャーのクイックに依存するところもあるので、一概な比較は難しいのですが、これも往年の名捕手と比較してみたいのですが、
- 伊東勤中日コーチ 生涯通算.341
- 城島健司元阪神タイガース 生涯通算.383
と高い数字を誇っていますが、嶋選手をみると、通算しても3割届かない・・・というところで、捕手としては「刺せない捕手」の部類にあたります。
とは言え、所属球団が変わればピッチャーの質も変わりますので、環境が代わる事で盗塁阻止率がアップする可能性がないとは言えません。
特に、中日ドラゴンズなら良いピッチャーも多いので、改善が見込めるかもしれませんね。
ただ一つ心配なのが、2019年盗塁阻止率が0.00だった時期があるという事。10試合で11盗塁企画され一度もさせなかった時に、解説者から「肘が下がっている、怪我をしているのでは無いか?」と心配されるほどでした。
怪我があるかどうかは、メディカルチェックされると思うので球団も把握できますが、フォームの問題なのであれば、改善の余地は十分にありそうですね。
嶋基宏選手の魅力は?無形の力に評価が集まる?
ここまでは数字で見える部分での評価を見てきたのですが、ここからは見えない数字の部分「無形の力」を見てみましょう。
野村克也監督は、嶋選手入団時の監督で、とにかく厳しく指導をした事でも知られていますが、新人のころは内角を要求できない捕手だったそうです。
その理由が
- ホームランを打たれるのが怖い
- ぶつけるのが怖い
と、これだけ聞くと、かなり弱気なリードしかできない捕手、外角の多い捕手という印象になりますが、野村監督は「真面目一辺倒では一流にはなれない」と言い続けてきたそうです。
実際の野村監督とのやりとりを取材で明らかにしていたものを見つけたのですが、
「この前、嶋に聞いたんです。"少しはバッターの反応を観察して狙い球を読めるようになったか?"と。
すると"全然わかりません"と言うんです。それで"なに!?"と怒ると、"ときどき、わかることもあります"とこうですよ。
キャッチャーは右目でボールを見て、左目でバッターの反応を見る。それが仕事なんです。
2年も黙ってやらせたのに"わかりません"じゃ、成長していないも一緒。嶋には何が何でもバッターが考えていることを見破ってやろうという執念が足りない!」
と野村監督が取材で応え、その後出場機会を減らし、嶋選手は干されてしまった時期もあったのです。
真面目な性格がアダとなって、真面目に答えた結果なのですが・・・
野村監督からすれば、「真面目一辺倒では成功しない」と歯がゆい思いだったのでしょうね。
大学時代にコンバート 理由は人間性
嶋選手は大学まで内野手でしたが、国学院大学の竹田監督が嶋選手の「人間性」を買って捕手へコンバートした事がきっかけで捕手になったそうです。
当時、練習でも一番声が出ていて、視野も広く、練習態度も模範になる、そして何よりも研究熱心だったという総合的な人間性を見てのコンバート、これが見事に当たっての開花。
楽天イーグルスの選手会長だけでなく、選手会の会長を務めるなど、人望も厚く、リーダーシップを持った逸材だという、要するに「無形の力」こそ評価されるべき嶋選手の能力なんだという事なんです。
嶋基宏選手に合う球団はどこだ?
では今獲得が予想されている各球団の捕手事情を確認し、嶋選手が所属するべき球団はどこか?を考察したいと思います。
まずは中日ドラゴンズからですが、
- 92試合出場 加藤匠馬 27歳
- 35試合出場 木下拓哉 27歳
- 33試合出場 大野奨太 32歳
- 9試合出場 石橋康太 18歳
が主な2019年出場選手、FA移籍の大野選手が出場機会が減ってきていますが、大野選手もあまり肩は強くないので、嶋選手と特徴は被りそうです・・
これから石橋選手を英才教育すると思われますが、それまでは加藤、木下両選手を中心に回していく事になりそうです。
次に、ヤクルトスワローズですが、
123試合出場 中村悠平 29歳
以外は、主だった成績を残せていません、中村選手自体もそこまで評価の高い数字を出しているわけではなく、正捕手不在といったところでしょうか。ドラフト会議では投手中心の編成で捕手獲得無しからも嶋選手獲得は必須かもしれません。
次に、千葉ロッテマリーンズですが、
- 100試合出場 田村龍弘 25歳
と正捕手がまだまだ若い!バックアップとして細川享選手はじめ、複数の若手捕手もいますが、細川捕手は年齢的に見れば、まもなく引退の可能性もあります。
経験値の高い中堅キャッチャーが必要という事情が見られそうですが、出場機会が増えるという事は難しいと予測されます。
最後にオリックスバファローズですが、
- 138試合出場 若月健矢 24歳
が正捕手、その他にもベテランの山崎勝己、伏見寅威両選手と中日から移籍の松井雅人選手がいます。
今年は若月選手以外の捕手が怪我も多く、やりくりが大変だったという事情がありますが、ドラフトでは育成選手で一人捕手を獲得、髙城俊人選手は戦力外通告と、獲得に乗り出す理由はあり??
以上、4球団の現状ですが、この中では「ヤクルトスワローズ」が一番可能性を感じます。
今年は投手防御率もワーストですし、防御率改善にベテランの力が必要になるという事だけでなく、楽しみな事としてドラフト1位の奥川君が入団してきますので・・
マー君とバッテリーを組んだ経験を惜しみなく伝えるのに、うってつけの人材かもしれないと思います。
2019年11月5日 追記
12日に行われる合同トライアウト終了後になりますが、ヤクルトスワローズが嶋選手との契約を結ぶ予定との事です。
予想的中!かも??(簡単な予想ですが・・)
ゆくゆくは良い指導者にもなれる逸材
楽天イーグルスとしては、ゆくゆくは指導者として残ってほしいと願う気持ちもあったと思いますが、嶋選手の年齢をみてもあと少なくとも3年から5年は現役ができそうです。
今年も上原選手、阿部選手・・とレジェンドの引退発表が相次ぎましたが、自分たちで引退の時期を決める事ができる選手って幸せだなぁと思うし、稀有な存在だと思います。
そういう意味では、鳥谷選手や嶋選手は、「自分たちで引退を決めても良い選手」の部類だと思いますので、納得するまで現役を全うしてほしいなぁと願います。
嶋選手、移籍先が決まるまではまだ少しかかるかも知れませんが・・嶋選手らしさが発揮できる球団に入団し、これからも野球界を盛り上げてほしいなぁと思いますので、応援しています!
2019年11月13日 追記
ヤクルトスワローズと合意したようですね!背番号と年俸の発表はありませんでしたが、活躍を願っています!
あと、巨人のキャッチャー争いが、2020年は面白くなる予感です^^
→ 大城卓三捕手の本当のところの評価 2020年の成績次第でコンバートも?
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