2019年にイースタン・リーグの首位打者を獲得し、周囲を驚かせた山下航汰選手。
高卒1年目での首位打者は高木守道、イチロー氏以来の快挙だそうで、打率.332は二位の関根元気選手と.003差でしたが、3割超えは山下選手と関根選手のみとハイレベルな争い。
育成ドラフトでの獲得でしたが、支配下登録され一気に評価は急上昇、1軍でのデビューも果たし良い経験を積んだ一年になりました。
シーズン終了後は、フェニックスリーグでも活躍、アジアウィンターリーグへ派遣され打率.360(25-9)、本塁打0、5打点の活躍を見せていましたが・・
右足の負傷で無念の途中帰国となりましたが、現在は怪我も完治しており、丸佳浩選手と共にジャイアンツ球場で自主トレを行っています。
2019年の入寮の際には、ノートを持参し日々野球で気づいた事をノートに書き留めていましたが、自主トレでは丸ノートの書き方や丸選手の技術の全てを吸収しようと必至の山下選手。
2020年は、巨人のレギュラー陣に勝負を挑むことが出来るのでしょうか?開幕1軍、スタメンを勝ち取る事が出来るでしょうか?
ここでは、過去の成績やデータを分析しながら、山下選手の評価と現在の課題や期待するポイントを考察していきます。
山下航汰選手の打撃成績
山下選手の1年目のファームでの成績ですが、
打率 | 試合数 | 打席数 | 安打 | 本塁打 | 打点 | 盗塁 | 四球 | 死球 | 三振 | BB/K | 出塁率 | 長打率 | OPS |
.332 | 90 | 344 | 106 | 7 | 40 | 6 | 21 | 3 | 42 | 0.57 | .378 | .489 | .867 |
高い出塁率は、BB/Kを見る限り、積極的に振っていく中で安打で積み上げており、四球は多くないタイプですが、本塁打を含めた長打も打てるため、将来はクリーンナップを担える素材だと思います。
次に1軍での成績ですが、
試合 | 打席 | 安打 | 本塁打 | 打点 | 盗塁 | 四球 | 三振 | 打率 | 長打率 | 出塁率 | |
2019 | 12 | 13 | 2 | 0 | 0 | 0 | 1 | 2 | .167 | .250 | .231 |
12試合に出場し、二塁打を含む安打2本を放つなど、一軍の投手を経験していますので、山下選手の対応力の早さを考えれば、2020年はさらに順応出来るのではないか??と期待してしまいますね。
山下選手に対しての解説者の評価ですが、川相昌弘氏は
「1年目に(プロ初安打を)打つ、それも育成スタートで支配下になって9月の頭でヒットを打つというのはすごいことですよ」
と評価、また山本昌氏は
「すごくセンスを感じるんですよね。ボール球の見逃し方も、ちょっと高卒1年目に感じられない。落ち着きがあるんですよね」
と評価、また井端弘和氏は
「まずは木のバットに対応していることが凄いことですよね。非常に打席に構えたときも力が抜けていい構えをしていますよね。」
「どこかで力感出したくなるんですけど、足をあげたときもきっちり軸足にのって、そのときにも力感がないので、それを1年目にできているというのは、素晴らしいですよね」
と三者揃って、打撃に対する評価はかなり高いです。
山下航汰選手の打撃フォーム
解説者の評価が高い山下選手の打撃ですが、直近の動画を見ながらフォームを見ていきましょう。
2020年1月8日、丸佳浩選手との自主トレでの打撃練習ですが、ややオープンスタンスから放たれる打球は鋭いライナー性の打球が伸びています。
構えた時に、腕と体を揺らしながらタイミングを取るタイプで、丸選手のようなヒッチは使いませんが、腕に力みがなく、しなりが効いているので、柔らかい打撃フォームだという印象です。
トップの位置は、鎖骨より下とやや下げ気味、岡本和真選手もトップの位置を二岡コーチと修正したという話は有名ですが、バットが外回りせず最短距離で振り抜けるように、低い位置に置いていますが、バットの先端がやや前向きのタイプです。
丸佳浩選手は、いわゆる「肩乗せ打法」に近い、バットを寝かせて構えるタイプですが、バットを寝かせると腕力が必要になってくるため、メジャーの強打者やNPBでも一部の強打者だけが取り入れているフォームです。
山下選手と丸選手は、身長で見ると2センチしか変わらないのでほとんど変わりませんが、体重は12キロ変わりますので、現時点ではバットを寝かせて打てるほどのパワーは無いかも知れませんし、自分に合わないのかも知れませんが・・
いずれにしても、丸選手も入団当初はバットを立てて構えていましたし、今のような極端なオープンスタンスでもなかったので、毎年少しずつ変わっていっています。
山下選手も、丸選手のアドバイスも取り入れながら、一軍の投手に対応できる引き出しをどんどん増やしてくれれば、毎年進化が見られると思います。
山下航汰選手のウィンターリーグでの打撃
直近の試合での山下選手の打撃フォームをチェックしておきたいのですが、11月27日のアジアウィンターリーグで4打数4安打放っており、その時の動画がありました。
ウィンターリーグの投手はNPB2軍レベルかそれ以下なので、評価出来ませんが、格の違いを見せているのはさすがですし、見事なバットコントロールで安打を量産しています。
ただし、結果も大事ですが、それよりも大事な事は主力選手が休んでいる時も、実践勘を養い、海外の野球観に触れたり、実践を通して様々な経験をする事です。
春季キャンプ入りした時に、主力選手や準レギュラーが思うように身体を動かせない中、一年中野球漬けだった選手は、アピールしやすいので、2月4日に行われる紅白戦でどれだけアピール出来るか?を楽しみにしたいですね。
山下航汰選手の守備はファースト?ライト?
2020年の巨人の補強は、野手ではドラフト選手を除くと
- ヘラルド・パーラ(前ナショナルズ)
- 八百板卓丸(前楽天イーグルス・育成契約)
の2人のみです。
ゲレーロ選手は退団し、残った野手とパーラ選手を合わせてレギュラー争いをする事になりますが、山下選手のポジションはファーストとライトかレフトです。
それぞれのレギュラー候補を挙げると、
選手名 | |
ファースト | 大城卓三 |
北村拓己 | |
岡本和真 | |
中島裕之 | |
ライト・レフト | ヘラルド・パーラ |
亀井善行 | |
陽岱鋼 | |
重信慎之介 | |
石川慎吾 | |
加藤脩平 | |
松原聖弥 | |
立岡宗一郎 |
ここに挙げた選手以外にも2軍から1軍を狙う選手、ファーストに関しては新外国人獲得の噂もありますので、さらに競争が激化する可能性もあります。
外野守備の評価では山下選手は不利か?
守備に関して言えば、
- ヘラルド・パーラ
- 亀井善行
- 陽岱鋼
この3選手は、ゴールデングラブ賞を受賞するなど、守備面で大きく貢献出来るので、山下選手よりもアドバンテージがあります。
また、俊足で守備範囲が広い
- 重信慎之介
- 松原聖弥
この2選手は、山下選手よりも足がありますので、代走や守備固めで貢献出来るので、山下選手よりもアドバンテージがあります。
さらに、右の代打も出来る勝負強さでは
- 石川慎吾
守備は評価出来ませんが、思い切りの良さや勝負強さは山下選手と似ているので、右と左の違いはありますが、ベンチ入りを狙うライバルになりそうな選手です。
ファースト守備はどんぐりの背比べか??
一方で、ファーストに関しては、守備だけを見れば名前を挙げた選手は「どんぐりの背比べ」かもしれません。
岡本和真選手はサードでの出場が濃厚なので、除きますが、実績がある選手と言えば大城卓三選手と中島裕之選手です。
大城選手はキャッチャーでレギュラー争いが期待されていますし、中島選手は、オープン戦で打撃面も含めて結果を残さなければ一軍に残るのは難しい状況なので、この二人を除けば北村選手との一騎打ちであれば大差はありません。
北村選手も、昨年はイースタン・リーグの最高出塁率のタイトルを獲得し、3年目にかける想いは相当強いでしょうから、キャンプ、オープン戦で結果を残したほうが、開幕メンバー入りに前進する可能性は十分ありそうですね。
山下航汰選手はなぜ育成契約だったのか?
ここまで、山下選手の打撃と守備に関するデータを見てきましたが、これだけの選手がなぜ育成契約だったのか??巨人ファンとしては嬉しい悲鳴ですが、山下選手の関係者からすると納得いかないところもあったと思います。
よく言われるのが、
「周りの高校生ドラフト1位評価の選手との比較」
ですが、小園海斗、藤原恭大、根尾昂選手に比べて守備面と走塁面がプロレベルではなかったという評価だったようです。
守備面では特に「スローイングが弱い」と評価でしたし、走塁面では一塁到達4.30秒、二塁到達8.35秒、三塁到達11.62秒と平均レベルという評価で、打撃面だけで評価される事はなかったようです。
では、実際2019年のファームでの結果はどうだったのか?を比較してみたいのですが、
打率 | 試合 | 打席数 | 安打 | 本塁打 | 打点 | 盗塁 | 四球 | 死球 | 三振 | BB/K | 出塁率 | 長打率 | OPS | |
小園 海斗 | .210 | 53 | 227 | 44 | 6 | 22 | 8 | 13 | 2 | 42 | 0.36 | .262 | .343 | .605 |
藤原 恭大 | .227 | 82 | 329 | 68 | 4 | 21 | 16 | 22 | 4 | 79 | 0.33 | .286 | .333 | .619 |
根尾 昂 | .210 | 108 | 444 | 86 | 2 | 33 | 9 | 28 | 4 | 127 | 0.25 | .266 | .298 | .563 |
山下選手の数字が優れている!みたいな単純な比較をしたいわけではなく、それぞれの数字から「ある意味スカウトの目が正しかった」事が分かります。
先程も書いていた通り、山下選手は打撃面より走塁と守備の評価が低かったですが、3名とも盗塁数は山下選手よりも多いですし、二塁打と三塁打の本数を試合数で計算してみたところ
試合数 | 二塁打 | 二塁打率 | 三塁打 | 三塁打率 | |
山下航汰 | 90 | 21 | 4.29 | 4 | 22.50 |
小園 海斗 | 53 | 6 | 8.83 | 2 | 26.50 |
藤原 恭大 | 82 | 12 | 6.83 | 4 | 20.50 |
根尾 昂 | 108 | 18 | 6.00 | 6 | 18.00 |
山下選手が二塁打こそややリードですが、逆に走力が必要な三塁打で言えば、根尾選手は圧倒的な身体能力を発揮していて、4人とも改めて高校生離れした素材で、走塁面で山下選手が大きく劣るとは思えないですね。
2019年山下選手がブレイクしたのも「木製バットへの順応が早かった」事が理由だと思いますし、他の3選手も今年は順応しそれぞれレギュラー争いに加わってくると思いますので、差が出てくるのは2年目以降でしょう。
特に、守備面で山下選手はスカウトの評価通り、外野手としてはスローイングや足の運びなど、プロの一軍レベルには達していませんので、ノビシロに期待したいところです。
2020年山下航汰選手に期待するところ
ここまでのデータや成績を見る限り、打撃に関してはすでに一軍レベルのためあとは実践を通して慣れていく必要がありますが、守備面は正直なところファームで鍛えたいところですが・・
あえて、1軍でチャンスを与え、どんどん起用する中で守備も慣れさせていくのが、本人のためになるのではないか??と思います。
「巨人は育成が下手」
と他球団やファンから罵られる事も多いですが、巨人は育成が下手なのではなく、FAや外国人選手を獲得し、1軍でチャンスを与えて我慢が出来ないだけで、チャンスさえ与えれば岡本和真選手のように成長する事も期待出来ます。
原監督が、我慢の起用が出来るのは春先だけで、その間に今年使える戦力は誰か?を見極めていく事になると思います。
開幕一軍を勝ち取り、最初は代打や代走からチャンスを得ていき、スタメンで結果を出し続ければ、レギュラー定着も夢ではありませんし、「今年に限ればファーストが若手チャンス枠」だと思いますので、山下選手にはレギュラー争いを勝ち抜いてほしいと願っています。
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