西武ライオンズからFA宣言後、巨人と3年契約で移籍を決めた野上亮磨投手。
巨人では、1年目に4勝、2年目は1勝と先発、リリーフの起用と難しい立場に置かれていましたが、不幸が重なり10月のフェニックスリーグでは、試合中に左足アキレス腱を断裂する大怪我を負い、手術する事に。
契約更改の場には、松葉杖をついて出席していましたが、公傷ではないので、来年結果を出さなければ立場はかなり厳しいところです。
西武ライオンズでは、先発で2桁勝利をあげていた野上投手が、なぜ今勝てなくなってしまったのか?先発とリリーフ両方で起用されていますが、実際のところ適正はどこなのか?
今回、野上投手の現状と課題、2020年に向けての期待を考察していきたいと思います。
野上亮磨投手のプロフィールと成績
まずはじめに、野上投手のプロフィールですが、
出身校 | 神村学園高→日産自動車 |
身長 | 177センチ |
体重 | 77キロ |
2005年のセンバツ準優勝投手、夏の甲子園は出場しておらず、プロ志望届を出すも指名がなかったため、日産自動車へ進み社会人野球では2年目から頭角を表します。
その後、新日本石油ENEOSの補強選手として活躍し始めると、プロのスカウトの目に止まり、2008年のドラフト会議で西武ライオンズから2位で指名を受けています。
野上亮磨投手の主な投手成績
次に野上投手の主な成績ですが、
年度 | 所属球団 | 登板 | 勝利 | 敗北 | セーブ | HP | 勝率 | 投球回 | 安打 | 本塁打 | 四球 | 三振 | 防御率 |
2009 | 埼玉西武 | 25 | 3 | 5 | 1 | 4 | .375 | 56.2 | 60 | 9 | 23 | 33 | 4.45 |
2010 | 埼玉西武 | 27 | 2 | 2 | 0 | 2 | .500 | 68.1 | 92 | 9 | 23 | 40 | 5.14 |
2011 | 埼玉西武 | 4 | 0 | 1 | 0 | 0 | .000 | 4.1 | 8 | 2 | 0 | 3 | 10.38 |
2012 | 埼玉西武 | 23 | 8 | 5 | 0 | 0 | .615 | 115.1 | 128 | 8 | 36 | 49 | 2.97 |
2013 | 埼玉西武 | 30 | 11 | 7 | 0 | 4 | .611 | 152.2 | 141 | 17 | 41 | 93 | 3.95 |
2014 | 埼玉西武 | 25 | 8 | 10 | 0 | 2 | .444 | 120.1 | 123 | 15 | 42 | 68 | 4.49 |
2015 | 埼玉西武 | 27 | 7 | 7 | 0 | 0 | .500 | 134.1 | 127 | 15 | 46 | 77 | 4.22 |
2016 | 埼玉西武 | 22 | 3 | 9 | 1 | 1 | .250 | 107 | 112 | 10 | 43 | 62 | 3.87 |
2017 | 埼玉西武 | 24 | 11 | 10 | 0 | 0 | .524 | 144 | 128 | 10 | 24 | 113 | 3.63 |
2018 | 読 売 | 25 | 4 | 4 | 0 | 1 | .500 | 71.1 | 74 | 15 | 21 | 54 | 4.79 |
2019 | 読 売 | 13 | 1 | 2 | 1 | 4 | .333 | 18 | 19 | 1 | 6 | 16 | 3.50 |
西武ライオンズ入団後1年目から1軍で起用、主に先発と中継ぎ両方で起用されていますが、当時から防御率は4点台近くでパッとせず。
3年目は一軍登板が減った代わりに、イースタン・リーグでは先発起用され最多勝のタイトルを獲得した事から4年目以降は先発として起用。
調子の悪い時は、中継ぎ起用で調子を取り戻しと先発と中継ぎ両方ができるポジションとして、西武では重宝されていました。
2ケタ勝利は、2013年と2017年の2度あるも、基本的には「貯金を作れないピッチャー」なので、評価がとても難しいピッチャーとしか、このデータのみでは判断出来ませんので・・
もう少し野上投手の事を知るために、セイバーメトリクスのデータを確認していきたいと思います。
野上亮磨投手をセイバーメトリクスから評価
さっそく、セイバーメトリクスから野上投手の評価をしていきたいのですが、ピッチャーで大切な能力と言えば、
- 球速
- 球威
- コントロール
- フィールディング(牽制含む)
大まかに分けると、上記の4つだと思います。
球速と球威は平均球速とGO/AOで見るしかない?
一つ目のデータですが、野上投手は2016年まで平均球速が139キロだったところが、2017年には141キロまでアップ、2018年には最速149キロまで球速を伸ばしています。
平均球速は、速い方ではないですが、野上投手は西武時代から球速で勝負するよりも「球のキレ」で勝負するタイプですので、速い球を投げないからといって、球威がないとは言い切れません。
そこで、もう一つのデータとして「GO/AO」(ゴロ/フライ率)を見て、球威の参考にしたいのですが、
GO/AO | |
2015 | 0.93 |
2016 | 0.73 |
2017 | 0.77 |
2018 | 0.82 |
2019 | 0.67 |
GO/AOは、1.00を真ん中として見た場合に、
- 数字が高くなればなるほど「ゴロを打たせる確率が高くなる」
- 数字が低くなればなるほど「フライを打たせる確率が高くなる」
という事になりますが、ゴロを打たせる確率が高いという事は「被本塁打率が低い」という事になり、ホームランを打たれにくくなります。
ただし、ピッチャーとしての特質とGO/AOは関係してくるので、一概にどちらの数字が良ければ良いピッチャーか?というわけではありません。
一方でフライを打たせる事が多い投手の多くは「高めに球威があるストレートを投げ込む」事が多いので、野上投手の場合は球威があればGO/AOとしては問題なし・・
となりますが、先ほど平均球速でもお話した通り、野上投手は球威で押せるタイプではなく、キレで勝負するタイプですので、フライ率が高いという事は「キレが悪い、もしくはコントロールミスが多い」という事が言えるのかもしれません。
コントロールはK/BBを参考にしてみた
次に、投手のコントロールに関するセイバーメトリクスとして「K/BB」(=奪三振 ÷ 与四球で計算)を紹介したいのですが、
K/BB | |
2015 | 1.67 |
2016 | 1.44 |
2017 | 4.71 |
2018 | 2.57 |
2019 | 2.67 |
K/BBは、「数字が高ければ高いほど奪三振力があり、四球が少ない投手」と評価され、3.50以上あれば優秀なピッチャーとされますが・・
過去5年で数字は良くはなってきていますが、巨人にきてからは2点台と落ち込んでいますので、四球率と奪三振率を調べてみたところ
与四球率 | 奪三振率 | |
2015 | .343 | .574 |
2016 | .402 | .579 |
2017 | .167 | .785 |
2018 | .295 | .759 |
2019 | .333 | .889 |
四球を出す確率が上がっていますが、三振を取るケースも増えてきていて、結果的にK/BBを下げる事になっています。
FIPとRSAAで投手の総合力を見る
次に、FIPとRSAAで、投手の総合的な評価を見ていきたいと思います。
FIPとは、
{被本塁打 × 13 +(与四球 + 与死球 ? 敬遠)× 3 ? 奪三振 × 2 } ÷ 投球回 + リーグごとの補正値
で計算しますが、「投手の真の防御率」とも言われて、打球が取り除かれた数字です。
RSAAとは、
RSAA = (リーグ平均失点率 - 失点率) ×投球イニング / 9
で計算しますが、「平均的な投手に比べてどれだけ点数を防げているか」を見る数字です。
それぞれの数字と防御率を並べてみると、
FIP | RSAA | 防御率 | |
2015 | 4.54 | -8.91 | 4.22 |
2016 | 4.52 | -8.16 | 3.87 |
2017 | 3.04 | 2.37 | 3.63 |
2018 | 5.22 | -2.39 | 4.79 |
2019 | 3.06 | -1.46 | 3.50 |
FIPでは、2017年、2019年意外は防御率よりも悪い数字が出ていますので、打球方向や塁打数に関係なく「防御率は良くない」という結果が言えます。
また、11勝を挙げた2017年意外はRSAAはマイナスとなっていますので、平均的な投手に比べても「得点を取られる」という結果が言えます。
以上、セイバーメトリクス上のデータを見て感じる事ですが、
- ストライクの平均球速はアップも、キレが良くなったわけではなく、ゴロ率が悪化。
- 球威がないのに、年々フライ率が増加。
- 四球率が悪化して無駄なランナーを出す傾向が見られる。
- 奪三振率は上がっているが、リリーフをしている影響か?
という事が挙げられますので、次に球種別のデータを調べてみる事にしました。
野上亮磨投手の球種と投球割合
野上投手の球種ですが、ストレート、スライダー、チェンジアップ、カーブ、フォークを2019年は使っていますが、評価の高かった2017年と球種の投球割合など詳細データと比較してみたところ、
2017年 | 投球割合 | 被打率 | 被四死 | 奪三振 | 空振率 | 見逃率 |
ストレート | 49.31% | .240 | 12 | 49 | 4.57% | 21.99% |
スライダー | 16.36% | .321 | 4 | 8 | 7.87% | 19.10% |
フォーク | 12.87% | .182 | 5 | 37 | 17.14% | 3.21% |
チェンジアップ | 13.74% | .227 | 2 | 16 | 21.74% | 17.39% |
カーブ | 7.08% | .250 | 0 | 3 | 9.09% | 14.94% |
カットボール | 0.64% | 1.000 | 0 | 0 | 7.14% | 14.29% |
ストレートが50%近くを占め、スライダー、フォーク、チェンジアップの割合が似ており、的を絞らせないような投球をしている印象です。
また、カーブは見逃し率を見る限り、カウントを整えるのに使っている様子が見られます。
一方で2019年のデータですが、
2019年 | 投球割合 | 被打率 | 被四死 | 奪三振 | 空振率 | 見逃率 |
ストレート | 40.12% | .292 | 2 | 6 | 6.15% | 20.77% |
チェンジアップ | 21.90% | .250 | 2 | 8 | 25.35% | 4.23% |
スライダー | 22.53% | .263 | 1 | 2 | 17.81% | 9.59% |
カーブ | 11.11% | .500 | 1 | 0 | 19.44% | 30.56% |
フォーク | 4.32% | .000 | 0 | 0 | 7.14% | 0.00% |
リリーフとして起用のため、投球割合が大きく変化しているのは止む終えないのですが、驚いたのがストレートの割合が10%以上も下がって40%程度だというところ。
また、チェンジアップとスライダーの比率が高まり、逆にフォークが減っているという事。
イメージで言えば、
「ストレートで押すピッチングから変化球投手へ転向したようなイメージ」
です。
これは、先発とリリーフの役割が明確でなかった事も影響している可能性がありますので、来季はどんな起用にでも応えられるだけの身体と心の準備をしっかりしてほしいと願っています。
野上亮磨投手の年俸と背番号の推移
次に、野上投手の年俸と背番号ですが、
年 | 年俸(推定) | チーム | 背番号 |
2020年 | 1億5000万円 | 読売ジャイアンツ | 23 |
2019年 | 1億5000万円 | 読売ジャイアンツ | 23 |
2018年 | 1億5000万円 | 読売ジャイアンツ | 23 |
2017年 | 5000万円 | 埼玉西武ライオンズ | 20 |
2016年 | 5800万円 | 埼玉西武ライオンズ | 20 |
2015年 | 4500万円 | 埼玉西武ライオンズ | 20 |
2014年 | 4800万円 | 埼玉西武ライオンズ | 20 |
2013年 | 2800万円 | 埼玉西武ライオンズ | 20 |
2012年 | 1300万円 | 埼玉西武ライオンズ | 20 |
2011年 | 1600万円 | 埼玉西武ライオンズ | 20 |
2010年 | 1500万円 | 埼玉西武ライオンズ | 20 |
2009年 | 1300万円 | 埼玉西武ライオンズ | 20 |
巨人ではマシソン選手が長らく背番号「20」を背負ってきましたので、23番を選んでいますが、今年マシソン投手が引退したので20番は空き番になりました。
韓国リーグから巨人入が決まったアンヘル・サンチェスの背番号が決まっていませんので、20番はサンチェス投手になる可能性はありますが、野上投手の成績次第では2021年以降に背番号変更もあり得るかも知れませんね。
また、年俸ですが、FA移籍で巨人入りを決めた際には3倍の1億5000万の3年契約となっていますが、3年契約だった森福允彦投手も今年自由契約となりましたので・・
結果が伴わなければ大幅減俸を受け入れるか、戦力外通告でトライアウトを受ける事になるかもしれませんので、2020年は野上投手も勝負の年になります。
野上亮磨投手が2020年活躍するためには
ここまで野上投手のデータや年俸から、現在おかれている立場や課題を見てきましたが、2020年活躍するためにはどうすれば良いか?をまとめると、まずは「怪我を完治する事」からです。
球団からは「オールスター明けに出てきて欲しい」と言われたそうですが、額面通り受け止めて良いのか?焦る気持ちもありますが、筆者的には「球団の言う通り、焦らずまずは100%に戻す事が先決」だと思います。
大竹寛選手が今年完全復活したのも、主に後半戦です。
途中一度ファーム落ちも経験していますし、シーズンを乗り切るピッチャーが充実している球団は、12球団見渡してもないと思います。
特に夏場になれば、先発ローテーションもバテてきて、2軍選手との入れ替えも頻繁になりますし、リリーフも登板過多が影響して、疲れが出てくる時期ですので、オールスター明けに戦力として見込めるとすれば、原監督も計算出来る投手と見込めるはずです。
後半戦のみの活躍となれば、大幅減俸は避けられないと思いますが、怪我が長引いたり、無理をして調子が戻らないままだった場合は、最悪は解雇ですから・・
2021年以降の契約を継続するためには、減俸覚悟でも先発でも、リリーフでも起用できるというところを首脳陣にアピールするしか道はないのでは無いでしょうか。
怪我をしてしまった事は悔やまれますが、野上投手のキャリアハイにあたる2017年程度のセイバーメトリクス上の数字が見込めるとすれば、あと数年巨人でも戦力として見込める可能性が出てきます。
まだ33歳ですから老け込む年齢でも無いですし、
- まずはキレのあるストレートを取り戻す事
- ストレートの割合をもう少し高めて変化球を活かす事
が出来るように、万全の身体づくりと強化をオフやリハビリ期間にやりきってから、一軍に戻ってきて欲しいと願います。
以上、野上亮磨選手に関する情報をまとめてきましたが、新しい情報があれば随時更新していきますので、何か情報があればTwitterやコメント欄にいただければ幸いです。
ベテラン投手の維持を見せて欲しい!