2019年FA移籍で広島東洋カープから巨人にやってきた丸佳浩選手。
工藤公康氏と同じように、優勝経験豊富な主力選手の移籍という事で「優勝請負人」と呼ばれたり、大変なプレッシャーがあったと思います。
新しい環境に慣れるのも大変な中、丸選手はプレッシャーをはねのけ、巨人の5年ぶり優勝に貢献し、また自身もセ・リーグ4連覇を成し遂げました。
さらに!
秋山選手の怪我で代わりに出場したプレミア12でも、短い時間での調整にも関わらず、侍ジャパンを世界一に導いてくれました。
最高の1年で結果を残してきましたが、丸選手自身は「日本一」になった事がありませんので、来季はセ・リーグの連覇と日本一の奪回を目指して、1年チームを引っ張ってくれると思います。
今回は、丸佳浩選手のこれからの活躍を、過去のデータ、成績、年俸などを見ながら考察していきたいと思います。
丸佳浩選手のプロフィールと成績
最初に丸選手のプロフィールですが、
出身校 | 千葉経大付高 |
身長 | 177センチ |
体重 | 89キロ |
2007年のドラフト指名は広島東洋カープから3位で指名、甲子園は2年で夏の甲子園、3年で春のセンバツと二度経験しています。
2年の時は外野手だった丸選手も、強肩を買われて3年には投手へ転向していますが、ドラフト時の評価は、前評判も高く巨人も広島に負けず調査をしていたようで、
「足が速くて肩が強い。でも、やっぱりバッティング。軸がしっかりしていてスイングが速い。一番はタイミングが取れること。あれは天性のもの。一本足打法の王さんや高橋由伸もそうだけど、“間”が取れるから、どこにバットがあってもいい。投手ではなく、打者として勝負させたかった」
と高校通算49本塁打の打撃力を買われての野手での指名だったそうです。
一方で、ドラフト前は守備に関しては評価は決して高くなかったです。
その証拠として、当時の野球部の監督が
「足は速く、肩も強かったけど、打球を予測するセンスがないものだからフライが捕れない。彼のエラーで負けそうになった試合がいくつもあります。それくらいヘタクソでした」
とコメントするほどで、ゴールデングローブ賞を取るような選手とは、想像もつかないですよね。
丸佳浩選手と言えば、丸ノート
あと、ベンチでよく目にする光景で、丸選手がノートをまとめている姿が、度々カメラに収められていますが、丸選手のノートにまとめるクセが出来たのは、高校時代だったようです。
この事も、先ほどと同じく野球部の監督が
「不器用だけど、何でも一生懸命コツコツやるタイプ。勉強もできた。私は全員に練習中、メモをとらせて、終わったらノートにまとめるように指導しているのですが、手抜きせず、きちんとやっていました」
と当時から、メモを取ったり、練習に対しては手抜きせずに、コツコツと努力を出来る選手だった事が伺えます。
どれだけ才能があっても、努力が伴わなければ、才能を開花させたり、最大限に引き出す事は出来ないと思いますので、丸選手の一番の才能は「何でも一生懸命コツコツとやる」という事だったのかも知れませんね。
丸佳浩選手の主な打撃成績
次に、丸選手のプロ入り後の主な打撃成績ですが、
年度 | 所属球団 | 試合 | 安打 | 本塁打 | 打点 | 盗塁 | 盗塁刺 | 四球 | 三振 | 打率 | 長打率 | 出塁率 | OPS |
2010 | 広島東洋 | 14 | 3 | 0 | 1 | 1 | 0 | 2 | 7 | .158 | .158 | .227 | .385 |
2011 | 広島東洋 | 131 | 105 | 9 | 50 | 9 | 6 | 44 | 105 | .241 | .359 | .319 | .678 |
2012 | 広島東洋 | 106 | 70 | 4 | 22 | 14 | 6 | 46 | 59 | .247 | .353 | .353 | .706 |
2013 | 広島東洋 | 140 | 138 | 14 | 58 | 29 | 15 | 85 | 103 | .273 | .425 | .376 | .801 |
2014 | 広島東洋 | 144 | 166 | 19 | 67 | 26 | 11 | 100 | 95 | .310 | .491 | .419 | .910 |
2015 | 広島東洋 | 143 | 132 | 19 | 63 | 15 | 7 | 94 | 143 | .249 | .413 | .361 | .774 |
2016 | 広島東洋 | 143 | 162 | 20 | 90 | 23 | 9 | 84 | 107 | .291 | .481 | .389 | .870 |
2017 | 広島東洋 | 143 | 171 | 23 | 92 | 13 | 3 | 83 | 113 | .308 | .505 | .398 | .903 |
2018 | 広島東洋 | 125 | 132 | 39 | 97 | 10 | 10 | 130 | 130 | .306 | .627 | .468 | 1.095 |
2019 | 読 売 | 143 | 156 | 27 | 89 | 12 | 5 | 86 | 125 | .292 | .495 | .388 | .883 |
2007年にカープ入団後、3年目ではじめて一軍出場をしていますが、このあたりはカープらしいと言いますか、有望な高卒選手に猛練習を課して鍛え上げます。
丸選手も例外ではなく二軍でじっくりと育ててデビューしたという事ですね。
一軍デビュー後4年で二桁ホームランを達成し、以降7年連続で二桁ホームラン達成していますが、丸選手の一番特徴が出ている点が「四球と三振数が圧倒的に多い」というところです。
特に2018年の四球数130は全球団の中でダントツで多い数字で、三振と同数になっています。
いわゆる強打者やホームランバッターと言われる部類の選手は、
「四球よりも三振の方が多くなる」
傾向が見られ、積極的に振っていきながら結果を出す選手が多いのですが、丸選手は四球を選べるという事で選球眼に優れている事が分かります。
丸選手の選球眼が良いか参考になる数値を見つけました
ボール球見極め率とストライクゾーンスイング率を調べてみると、
2019年 | ボール球 | ストライクゾーン | ||||
球団 | 選手名 | 見極率 | スイング率 | 見逃率 | 空振率 | |
1 | 広島 | 鈴木 誠也 | 85.68% | 60.47% | 39.53% | 5.44% |
2 | オリックス | 福田 周平 | 85.51% | 58.71% | 41.29% | 2.71% |
3 | 日本ハム | 近藤 健介 | 85.43% | 54.11% | 45.89% | 3.69% |
4 | 日本ハム | 西川 遥輝 | 84.98% | 57.14% | 42.86% | 5.33% |
5 | ヤクルト | 山田 哲人 | 84.86% | 60.21% | 39.79% | 8.79% |
9 | 巨人 | 丸 佳浩 | 82.21% | 67.90% | 32.10% | 10.57% |
全球団で9番目の数字になりますが、ストライクゾーンの見逃し率が低く、空振り率が10%以上と高いため「三振も増えてくる」のでは無いかと思います。
2019年のデータでは、四球が100個に届いていない事から見ても、例年よりも選球眼は悪かったと言っても良いかもしれません。
この裏付けとなるのが、2018年のボール球見極め率とストライクゾーンスイング率のデータです。
2018年 | ボール球 | ストライクゾーン | ||||
球団 | 選手名 | 見極率 | スイング率 | 見逃率 | 空振率 | |
1 | 日本ハム | 西川 遥輝 | 86.13% | 57.90% | 42.10% | 5.97% |
2 | 広島 | 鈴木 誠也 | 84.54% | 59.40% | 40.60% | 8.29% |
3 | 広島 | 丸 佳浩 | 84.38% | 65.76% | 34.24% | 16.94% |
4 | 日本ハム | 近藤 健介 | 84.19% | 52.96% | 47.04% | 4.76% |
5 | ヤクルト | 山田 哲人 | 83.94% | 59.42% | 40.58% | 8.74% |
全球団全体で3位とボール球の見極め率が2%ほど上昇しています。
ストライクゾーンのスイング率、見逃し率は大きな変化はありませんが、2018年の方が空振り率は高いため、「三振も四球も多い」という結果になったと予測できます。
OPSの平均は.900に迫る攻撃型のバッター
丸選手のもう一つの特徴として挙げられるのが「OPSの高さ」です。
丸選手のOPSは2018年に1.095を記録していますが、2015年のソフトバンクホークス柳田悠岐選手の1.10090に近い数字です。
この年の柳田選手の成績は、
試合 | 安打 | 本塁打 | 打点 | 盗塁 | 盗塁刺 | 四球 | 三振 | 打率 | 長打率 | 出塁率 | OPS | |
2015年 | 138 | 182 | 34 | 99 | 32 | 8 | 88 | 101 | .363 | .631 | .469 | 1.10 |
最優秀選手、ベストナイン、ゴールデングラブ賞、トリプルスリーを獲得した、キャリアハイの数字をあげた年です。
丸選手が、2018年にMVPを獲得したのも納得出来ますよね。
丸佳浩選手の主なタイトル獲得歴
ちなみに、丸選手のこれまで獲得したタイトルですが、
盗塁王 | 2013年 |
最高出塁率 | 2018年 |
最多安打 | 2017年 |
最優秀選手 | 2017年、2018年の2回 |
ベストナイン | 2014年、2016年、2017年、2018年、2019年の5回 |
ゴールデングラブ賞 | 2013年、2014年、2015年、2016年、2017年、2018年、2019年の7回 |
と、毎年コンスタントに打撃や守備のタイトルを獲得していますし、今年で30歳という事を考えれば、来年以降も様々なタイトルを獲得し続けてくれる事が期待できそうですね。
丸佳浩選手の筋力がすごい!体重も大幅にアップ
プロフィールで紹介した通り、丸選手の体重は身長177センチにしては90キロとかなり重いですが、決して脂肪で重たいわけではなく、若い頃から鍛え抜かれた「筋肉の鎧」をまとっているためです。
カープの選手は、金本選手も通っていたトレーニングクラブ アスリートでオフはトレーニングを積んでいますが、この様子を動画で見つけましたが、一言で言えば「エグい・・」です・・
動画を観て頂ければ、どれだけハードトレーニングを自分に課しているのか?が分かります。
若い頃からしっかり鍛え抜いているので、長年に渡ってフルシーズン戦えるだけの体力を付ける事が出来ているんだと思います。
巨人に来て迎えるこのオフには、若手選手も伴って丸塾を開講して、体作りや技術のアドバイスをしてくれる事も期待したいところですね。
巨人にフルスイングの習慣を生んだ丸効果
また、ハードトレーニングだけでなく、巨人に加入した事で一つの改革が起きたのが「フルスイングする習慣」が、巨人の打撃練習でも取り入れられるようになった事です。
練習からフルスイングを続けるには、耐えられるだけの体力と身体の強さがなければ続けられません。
原監督が感嘆したように、丸選手は練習から常にフルスイング、試合でも常に強振し続ける姿は、坂本選手や岡本選手にも大きな影響を与えたと言われています。
その他にも、独特のティー打撃などのルーティンやヒッチスタイルは、坂本選手、吉川選手、加藤選手などが取り入れたとも言われていて、多くの丸効果が生まれています。
今年、坂本選手がMVPの成績をあげた事や真の4番として覚醒し始めた岡本選手の成長の影には、丸選手の存在が欠かせなかったと思いますし、広島だと鈴木誠也選手が球界一の4番バッターへ成長した事にも繋がっているのでしょうね。
左右の投手でも不得意を作らない高い技術と得点圏打率
他にも様々な打撃成績を残している丸選手ですが、左右のピッチャーでも大きな打率差はなく、得点圏打率でも勝負強さを高い水準でキープしています。
打率 | 打点 | 本塁打 | 四球 | 三振 | 出塁率 | 長打率 | OPS | 対右打率 | 対左打率 | |
2019年 | 0.302 | 57 | 6 | 24 | 21 | .405 | .534 | .940 | .308 | .270 |
2018年 | 0.285 | 60 | 11 | 38 | 32 | .457 | .593 | 1.051 | ||
2017年 | 0.318 | 66 | 4 | 28 | 28 | .418 | .490 | .908 | .319 | .288 |
丸佳浩選手の守備力も球界随一の成績
丸選手が評価されるのは、打撃だけでなく、守備力も高い事が挙げられます。
守備率の評価で、一番見られる数字と言っても良いのがセイバーメトリクスで使われる「UZR」ですが、丸選手の数字はこちらです。
UZR | |
2019年 | 8.06 |
2018年 | -4.03 |
2017年 | 17.1 |
2016年 | 11.8 |
2015年 | 4.8 |
2018年こそ怪我の影響もあって、UZRがマイナスになっていますが、センターという広い守備範囲を求められるポジションでも素晴らしい結果を出しています。
丸佳浩選手の年俸と背番号の推移
次に丸選手の広島から巨人での年俸や背番号の推移ですが、巨人に移籍後は総額5年25億5000万ととてつもない契約となっていますが、年俸としては1年4億5000万の計算ですが、
年 | 年俸(推定) | チーム | 背番号 |
2020年 | 4億5000万円 | 読売ジャイアンツ | 8 |
2019年 | 4億5000万円 | 読売ジャイアンツ | 8 |
2018年 | 2億1000万円 | 広島東洋カープ | 9 |
2017年 | 1億4000万円 | 広島東洋カープ | 9 |
2016年 | 8500万円 | 広島東洋カープ | 9 |
2015年 | 9000万円 | 広島東洋カープ | 9 |
2014年 | 5100万円 | 広島東洋カープ | 9 |
2013年 | 2300万円 | 広島東洋カープ | 63 |
2012年 | 1700万円 | 広島東洋カープ | 63 |
2011年 | 600万円 | 広島東洋カープ | 63 |
2010年 | 550万円 | 広島東洋カープ | 63 |
2009年 | 500万円 | 広島東洋カープ | 63 |
2008年 | 500万円 | 広島東洋カープ | 63 |
と、広島の時から比べると2倍以上の昇給で巨人に迎え入れられている事になります。
背番号「63」は、広島では出世番号として扱われていて、ブレイクを期待されている選手が丸選手のあともつけていて、田中広輔、西川龍馬選手がそれぞれ背負った番号でもあります。
歴代のFA移籍選手の一年目の年俸と主な打撃成績
ところで、丸選手の成功以外でFA移籍選手の一年目をどのような成績を残してきたのでしょう?
気になったので年俸と主な打撃成績を調べてみたところ、
年俸 | チーム順位 | 試合 | 安打 | 本塁打 | 打点 | 盗塁 | 盗塁刺 | 四球 | 三振 | 打率 | 長打率 | 出塁率 | OPS | |
清原和博 | 3億6000万円 | 4位 | 130 | 115 | 32 | 95 | 0 | 0 | 69 | 152 | .249 | .509 | .356 | .865 |
江藤智 | 1億8000万円 | 1位 | 127 | 117 | 32 | 91 | 7 | 1 | 58 | 92 | .256 | .508 | .340 | .848 |
小笠原道大 | 3億8000万円 | 1位 | 142 | 177 | 31 | 88 | 4 | 0 | 43 | 98 | .313 | .539 | .363 | .902 |
と清原和博氏はチーム4位とその責任を問われるような結果に終わっていますが、江藤選手、小笠原選手は期待に応える事ができたと言えます。
丸選手も、チームを優勝に導いただけでなく、自身の成績もMVP級の働きで、チームの中心となって機能しましたので、巨人としては最高の補強が出来たと改めて感じます。
2020年の丸佳浩選手の活躍はお墨付きか?
2019年最高の結果を収めた丸選手ですが、さらに追い風が吹きそうな予感です。
と言いますのが、広島カープ時代にお世話になっていた石井琢朗コーチが、ヤクルトから巨人に移籍した事が大きいと、筆者は見ています。
コーチの仕事は極端な言い方をすれば、「調子の良い状態に戻してあげる」事が仕事です。
そのため、調子の良い状態を常に観察し、知っておく必要がありますし、調子の良い状態に戻すために様々な練習法や矯正が出来るだけの引き出しの多さもなければいけません。
その意味では、広島カープを常勝軍団まで引き上げたキーマンとも言える石井コーチが巨人にいる事は、丸選手の一番良い状態を常にチェックしていたのですがら、これだけ心強い事はないと思います。
話題のツイスト打法は封印になりそうです。
今年のシーズン終盤で話題になった「ツイスト打法」ですが、阿部二軍監督のアドバイスで取り入れたようです。
丸選手の矯正方法が分からない中で、阿部二軍監督が無理やりな矯正として右肩が開かない打撃技術として、自分の技術を伝えていますが、ツイスト打法を続けていると、自分の打撃を見失ってしまう事もあると思います。
丸選手もずっと続けるつもりはなかったと思いますし、調子が上がってくるまでの緊急措置としてツイスト打法をやっていましたので、あの時しか見られない貴重な打ち方だと思います。
また、ツイスト打法は腰への負担が大きいみたいですから、丸選手の今後の選手生命が1年でも長く出来るように、元の打法で調子を取り戻してほしいと願っております。
丸ポーズは来年も継続されるのか??
あともう一つ、阿部二軍監督の発案で始まったと言われる「丸ポーズ」。
今年の巨人流行語大賞なるものがあれば、大賞もののベンチの一体感を高める、盛り上がるポーズでしたが、阿部二軍監督の引退に伴って、来年からも継続されるのか?
筆者としては気になったのですが、今年原監督まで丸ポーズを取るほど、大変人気になったパファーマンスですから、来年も是非続けて欲しいなぁと思います。
それこそ、石井コーチも丸ポーズを一緒にやっている、そんなシーンが見られるかも??と思うと、ちょっと楽しくないですか??
丸ポーズが2020年もたくさん見られるという事は、それだけ巨人の勝利する確率がグンと上がるわけですし、沢山の丸選手のホームランが見られることを、楽しみにしています。
以上、今回は巨人に移籍し、一年目から本領発揮、巨人を変えてくれた丸佳浩選手の特集でした。
今後も丸選手の情報は最新情報になるように更新していきますので、新しい情報があればTwitterやコメントいただけると幸いです。
丸に続け!高卒期待の選手と言えば??