現代野球は様々な数字が分析され、守備位置、打撃技術、投球技術の向上に活かされていますが、投手力の数字を見るのに、DIPSとFIPと呼ばれる2つの数値があります。
これまでは、
- 防御率
- 勝利数(負け数)
- 勝率
- 奪三振(率)
- QS(クオリティースタート)
といった数字で評価される事が多かったのですが、セイバーメトリクスが重要視され、数値化されている現代では、様々な数字から投手の評価が行われます。
まず、DIPSとは「Defense Independent Pitching Statistics」の略、FIPとは「Fielding Independent Pitching」の略を指しますが、それぞれの数値算出ですが、
DIPS算出方法
- 被本塁打
- 与四死球
- 奪三振
この3つの数字だけで投手の評価を行うというものです。
FIP算出方法
- 被本塁打
- 四死球
- 奪三振
- 投球回
- 防御率
これらの数字に補正する平均値を加えて、投手の評価を行うというものです。
DIPSが重要視されるのは、「投手のコントロール可能な部分だけで、投手の実力を判断する」事が可能だからです。
また、FIPについては、「投手の運的要素を排除可能」というところで、翌年以降の防御率を予想するのに使われる指標でもあるとの事です。
従来の数字と、DIPSとFIPを合わせて、より実力の比較がしやすいため、FA移籍で戦力となるかどうか?の参考になる可能性があります。
今回は、複数球団で獲得オファーの予想される2019年度の目玉投手美馬学投手の数字を参考に、来季活躍が見込めるかどうか?を考察したいと思います。
近年FA移籍した投手の移籍前後のDIPSやFIPは?
美馬投手の実力を測る前に、DIPSやFIPが有力な数字かどうかを確認するため、巨人に移籍してきた山口俊投手と野上亮磨投手の移籍前後の数字を確認してみましょう。
移籍前 | 移籍後 | |
山口俊 | 参考数値なし | 15勝 DIPS 2.791、FIP 3.08、防御率2.91 |
野上亮磨 | 11勝 DIPS 3.037、FIP 2.791、防御率3.63 | 参考数値なし |
山口俊投手は横浜では抑えと先発両方をしているので、データ不足のため数字がありませんでしたが、巨人移籍一年目の4勝、DIPS 6.549、不祥事もあり散々な数字です。
野上選手は、移籍後は活躍できておらず、こちらも同じくデータ不足のため参考になる数字はありません・・・
上記では比較が出来ないため、楽天イーグルスへ移籍した岸孝之投手と阪神タイガースに移籍した西投手で確認してみましょう。
岸孝之 | 2014年13勝 DIPS3.55、FIP3.74、防御率2.51 | 2018年11勝、DIPS3.48 FIP3.58、防御率2.72 |
西勇輝 | 2018年10勝 DIPS3.59、FIP3.70、防御率3.60 | 2019年11勝、DIPS3.57、FIP3.77、防御率2.97 |
岸投手は、ここ数年怪我などもあり登板数を消化出来ていませんので、少しだけ遡りましたが、防御率とセイバーメトリクスの数字の相関性はなさそうです。
西投手がFA移籍前後でわかりやすいとは思いますが、数字を見る限り、防御率とセイバーメトリクスの数字の相関性はありません。
一般的には、FIPが改善される事で、翌年の防御率の改善が見込まれると言われますが、西投手の場合は安定して実力を発揮できるというところに魅力がある投手なのかもしれません。
美馬学投手のセイバーメトリクスと防御率は?
ここで本題に入りますが、FAの目玉投手である美馬投手の数字を過去5年分紹介したいと思います。
投球回数 | 勝利数 | 防御率 | DIPS | FIP | |
2015年 | 86.1 | 3 | 3.44 | 3.77 | 2.77 |
2016年 | 155 | 9 | 4.30 | 3.57 | 3.80 |
2017年 | 171.1 | 11 | 3.26 | 3.55 | 3.63 |
2018年 | 79 | 2 | 4.56 | 4.97 | |
2019年 | 143.2 | 8 | 4.01 | 3.86 | 4.07 |
2018年こそ登板数が減っているので参考になりませんが、毎年コンスタントにイニング数を消化できるという点では、先発投手としての評価は高いと思われます。
また、FIPの年間ランキングでも、勝利数こそ二桁が届いていない事が多いですが、毎年ベスト10には入る数字を誇っています。
FIP自体が、年間通して投球できるかどうかの「投球回」を指標の一つに入れているところもあるので、防御率との相関性を見るよりは、「年間通してローテーションを守ってくれるか」を見るのに良い気がします。
気になる被本塁打数、QS率、援護率
また、他にも気になる数値として
- 被本塁打数は、年間で19本(リーグワースト2位タイ)
- QS率 52.00%(リーグ6位)
- 援護率(一試合あたりの援護点) 4.56
となっていて、ある程度打ち勝つ野球ができるだけの打力がなければ、勝ち星が伸びないピッチャーという特徴があるような気がします。
また、狭い球場の場合は「ホームランを献上する可能性が高くなるかもしれない・・」ので、球威で勝負するタイプでは無いので、コントロールミスが命取りになる可能性があります。
上記特徴を活かしておすすめの入団先は?
報道によると、美馬投手には千葉ロッテマリーンズ、ヤクルトスワローズ、読売ジャイアンツが調査しているとの事です。
防御率は3点台後半から4点台前半、ある程度の援護が見込める打力があるチーム、ローテンションピッチャーが足りず、年間通してコンスタントにイニング数を稼げるピッチャー
という特徴からすると、
- ヤクルトスワローズ
- 読売ジャイアンツ
が候補になりそうです。
美馬投手は、在京球団が希望との事ですので、三球団とも在京というところで条件には合致しますが、圧倒的な打力があるセ・リーグ2球団、リーグ移籍を嫌う場合は千葉ロッテマリーンズ。
このあたりが妥当なところでしょうか?
11月6日現在では、巨人がすでに交渉済み、ヤクルトスワローズも交渉に入るとの情報もありますが、美馬投手はどの球団を選択するのでしょうか?
また、新しい情報があれば、随時更新したいと思います。
2019年11月24日追記
美馬投手は、ロッテ入りが決まりましたので、プロテクト枠予想しています。
→ 千葉ロッテマリーンズと楽天イーグルス、FA移籍は主力と若手のトレードのようなもの?
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