千葉ロッテマリーンズのエースナンバー「18」を背負っていた涌井秀章投手が、楽天イーグルスへ金銭トレードで移籍する事が判明。
球界内に衝撃を与えましたが、今回のトレードは日本流のトレードという印象より、メジャーのトレードのように戦力として期待されて移籍するポジティブな印象がする内容です。
日本のトレードは、現役ドラフトが話し合われているように1軍で活躍できず、2軍で戦力になれずに埋もれている選手同士がトレードされる印象ですが、今回は主力の選手が移籍です。
涌井選手は来季で34歳と、まだまだ老け込む年齢ではありませんし、環境が変わればモチベーションも上がり、結果も伴う可能性があります。
今回、涌井選手が2020年活躍するための課題や期待を、過去の成績やデータを見ながら考察していきます。
涌井秀章投手のプロフィール
涌井選手のプロフィールですが、
出身校 | 横浜高校 |
身長 | 185センチ |
体重 | 85キロ |
高校時代から松坂大輔二世と呼ばれるも、2年生は1学年上に成瀬善久選手がいたため、控え投手として甲子園に出場、3年生でも甲子園に出場していますが、準々決勝で敗退。
2004年のドラフト会議で西武ライオンズの単独1位指名を受けて、プロ入りしています。
涌井秀章投手の主な投手成績
次に、涌井選手の投手成績ですが、
登板 | 勝利 | 敗北 | セーブ | HP | 勝率 | 投球回 | 本塁打 | 四球 | 四球率 | 三振 | 奪三振率 | 防御率 | |
2005 | 13 | 1 | 6 | 0 | 0 | .143 | 55.1 | 11 | 23 | 0.42 | 57 | 1.03 | 7.32 |
2006 | 26 | 12 | 8 | 0 | 0 | .600 | 178 | 16 | 53 | 0.30 | 136 | 0.76 | 3.24 |
2007 | 28 | 17 | 10 | 0 | 0 | .630 | 213 | 14 | 50 | 0.23 | 141 | 0.66 | 2.79 |
2008 | 25 | 10 | 11 | 0 | 0 | .476 | 173 | 16 | 51 | 0.29 | 122 | 0.71 | 3.9 |
2009 | 27 | 16 | 6 | 0 | 0 | .727 | 211.2 | 12 | 76 | 0.36 | 199 | 0.94 | 2.3 |
2010 | 27 | 14 | 8 | 0 | 0 | .636 | 196.1 | 21 | 54 | 0.28 | 154 | 0.79 | 3.67 |
2011 | 26 | 9 | 12 | 0 | 0 | .429 | 178.1 | 9 | 41 | 0.23 | 108 | 0.61 | 2.93 |
2012 | 55 | 1 | 5 | 30 | 4 | .167 | 63 | 1 | 22 | 0.35 | 40 | 0.63 | 3.71 |
2013 | 45 | 5 | 7 | 7 | 15 | .417 | 92.1 | 4 | 29 | 0.31 | 79 | 0.86 | 3.9 |
2014 | 26 | 8 | 12 | 0 | 0 | .400 | 164.2 | 9 | 63 | 0.38 | 116 | 0.71 | 4.21 |
2015 | 28 | 15 | 9 | 0 | 0 | .625 | 188.2 | 11 | 57 | 0.30 | 117 | 0.62 | 3.39 |
2016 | 26 | 10 | 7 | 0 | 0 | .588 | 188.2 | 15 | 48 | 0.26 | 118 | 0.63 | 3.01 |
2017 | 25 | 5 | 11 | 0 | 0 | .313 | 158 | 20 | 53 | 0.34 | 115 | 0.73 | 3.99 |
2018 | 22 | 7 | 9 | 0 | 0 | .438 | 150.2 | 16 | 43 | 0.29 | 99 | 0.66 | 3.7 |
2019 | 18 | 3 | 7 | 0 | 0 | .300 | 104 | 14 | 27 | 0.26 | 87 | 0.84 | 4.5 |
二年目の2007年から4年連続で二桁勝利、2011年こそ右肘の遊離軟骨が見つかった事での痛みが発症し9勝どまり、翌年は抑え不在のチーム事情もありリリーフエースとして30セーブをあげる活躍で、復活を印象づけています。
2013年は先発にリリーフに起用が定まらない中で、調子を上げられず成績を降下させていますが、2013年にFA宣言で千葉ロッテマリーンズに移籍すると、2015年、2016年と二桁勝利をあげて復活を遂げています。
K/BBは数値的に物足りないのには理由が?
涌井投手の特徴として、
- 与四球率が低い
- 奪三振率は平均
特に四球が少ない事からコントロールには絶対の自信があるようですが、K/BBを調べてみても
K/BB | |
2005 | 2.48 |
2006 | 2.57 |
2007 | 2.82 |
2008 | 2.39 |
2009 | 2.62 |
2010 | 2.85 |
2011 | 2.63 |
2012 | 1.82 |
2013 | 2.72 |
2014 | 1.84 |
2015 | 2.05 |
2016 | 2.46 |
2017 | 2.17 |
2018 | 2.30 |
2019 | 3.22 |
2.00後半の数字が続いていますが、平均3.00を考えると物足りない印象もありますが、涌井投手は三振は多くないので、K/BBが低いから制球力がないとは言い切れません。
GO/AOから涌井選手の投手の特徴が分かります
そこで、「GO/AO」とよばれる、ゴロとフライのアウト率の割合をデータにしたものを調べてみたところ、
GO/AO | |
2005 | 0.87 |
2006 | 1.35 |
2007 | 1.26 |
2008 | 1.18 |
2009 | 1.10 |
2010 | 0.92 |
2011 | 1.38 |
2012 | 1.26 |
2013 | 1.01 |
2014 | 0.89 |
2015 | 1.13 |
2016 | 1.23 |
2017 | 1.13 |
2018 | 1.19 |
2019 | 1.19 |
年度によって多少の違いがありますが、ほとんどのシーズンで「ゴロが多い」とデータで分かりますので、打たせて取るタイプのピッチャーですね。
涌井秀章の投球割合と球種
次に、涌井選手は、スリークォーターのフォームから投げる投球割合と球種ですが、
球種 | 投球割合 | 被打率 | 被本 | 被四死 | 奪三振 | 空振率 | 見逃率 |
ストレート | 46.60% | .261 | 9 | 14 | 41 | 6.79% | 15.65% |
スライダー | 19.14% | .313 | 1 | 5 | 18 | 10.92% | 19.61% |
シュート | 8.04% | .448 | 2 | 1 | 1 | 7.33% | 14.00% |
チェンジアップ | 6.65% | .289 | 1 | 2 | 12 | 16.94% | 12.10% |
フォーク | 7.94% | .250 | 0 | 3 | 8 | 14.19% | 6.76% |
カットボール | 5.04% | .316 | 1 | 0 | 3 | 9.57% | 18.09% |
シンカー | 0.64% | .400 | 0 | 0 | 0 | 0.00% | 0.00% |
カーブ | 5.95% | .200 | 0 | 1 | 4 | 1.80% | 30.63% |
球種が豊富で、ストレートとスライダー以外の球種割合は低いですが、様々な球種を散らしながら的を絞らせない、コントロールの良いピッチャーと、イメージ通りのピッチャーです。
一方で、「勝負球となる球種がどのボールなのか?」という課題をデータからも見て取れます。
西武時代には落差があり決め球となっていたフォークボールも、近年は落差も少なく、追い込んでからのピッチングに苦労している可能性を感じました。
ちなみに2015年ロッテ移籍後に15勝を挙げたシーズンの球種割合と球種ですが、
球種 | 投球割合 | 被打率 | 被四死 | 奪三振 | 空振率 | 見逃率 |
ストレート | 50.08% | .249 | 40 | 66 | 5.63% | 16.26% |
スライダー | 16.67% | .279 | 5 | 10 | 6.35% | 16.54% |
フォーク | 12.44% | .245 | 8 | 24 | 13.14% | 6.70% |
シュート | 9.59% | .311 | 4 | 6 | 5.02% | 15.72% |
カーブ | 10.64% | .184 | 0 | 11 | 5.12% | 29.82% |
チェンジアップ | 0.55% | .000 | 0 | 0 | 0.00% | 17.65% |
カットボール | 0.03% | .000 | 0 | 0 | 0.00% | 0.00% |
とチェンジアップとカットボールの使用はほぼなく、ストレートで押すピッチングスタイルでしたので、徐々に変化球を多めにしたピッチングスタイルへ変化しているのが分かります。
涌井秀章投手の年俸と成績の推移
続いて、涌井投手の年俸と成績の推移ですが、
年 | 年俸(推定) | チーム | 背番号 |
2019年 | 2億円 | 千葉ロッテマリーンズ | 18 |
2018年 | 2億円 | 千葉ロッテマリーンズ | 16 |
2017年 | 2億5000万円 | 千葉ロッテマリーンズ | 16 |
2016年 | 2億2000万円 | 千葉ロッテマリーンズ | 16 |
2015年 | 2億2000万円 | 千葉ロッテマリーンズ | 16 |
2014年 | 2億2000万円 | 千葉ロッテマリーンズ | 16 |
2013年 | 2億2000万円 | 埼玉西武ライオンズ | 18 |
2012年 | 2億1000万円 | 埼玉西武ライオンズ | 18 |
2011年 | 2億5300万円 | 埼玉西武ライオンズ | 18 |
2010年 | 2億2000万円 | 埼玉西武ライオンズ | 18 |
2009年 | 1億2000万円 | 埼玉西武ライオンズ | 18 |
2008年 | 8500万円 | 埼玉西武ライオンズ | 16 |
2007年 | 3500万円 | 西武ライオンズ | 16 |
2006年 | 950万円 | 西武ライオンズ | 16 |
2005年 | 800万円 | 西武ライオンズ | 16 |
2007年、2009年、2015年の3度に渡り最多勝をあげ、2009年には沢村栄治賞と最優秀バッテリー賞を獲得し、年俸が大幅にアップしていますが、近年は成績降下の影響で年俸もダウンしています。
2019年には背番号が16から18へ変更になっていますが、1年で楽天イーグルスへ移籍となり、背番号は再び「16」に戻り、年俸は2億円のままで移籍となります。
入団後は、16と18の背番号を複数球団で背負った数少ない選手ですが、楽天イーグルスでは準エース級の活躍が期待されています。
楽天イーグルスは、
- 背番号11の岸孝之投手
- 背番号14の則本昂大投手
の二大エースがいますが、背番号18はマー君以来不在となっています。
涌井投手も、背番号16で心機一転という気持ちで選んだと思いますが、活躍次第では楽天イーグルスでも背番号「18」を背負う事になるでしょうか。
涌井選手がハマれば、楽天イーグルスに強力な三3本柱が誕生、さらに松井裕樹投手も先発転向が噂されていますので、4本柱に成長する可能性があり、強力なチームになりそうな予感がします。
涌井秀章投手2020年活躍は期待できそう?
ここまで書いてきたとおり、涌井投手は西武時代、ロッテ時代ともに、複数の球種で的を絞らせず、ゴロを打たせてアウトを取るタイプです。
特に最多勝をあげているシーズンでは、ゴロ率が1.20以上ありますので、ゴロをいかに打たせられるか?が出来れば、まだまだ結果を出す事は可能だと思います。
特に背番号変更があった2009年には16勝、ロッテに移籍した2年目の2015年には15勝ををあげて最多勝を獲得しており、責任の重さが変わったり、新天地に環境が変わったりすると成績を急上昇させる傾向がみられます。
また、練習の虫として知られる涌井投手なので、若手投手に有望株が多い楽天イーグルスからすると、見本になり、刺激を与える事で、若手投手陣の向上が見込める可能性もあります。
2017年オフには海外FA権を使ってのメジャー移籍に挑戦するも、オファがなくロッテに残留する事になったり、チャレンジする事に前向きなタイプなので、今回の移籍はおそらく涌井投手自身もポジティブに捉えていると思います。
是非とも、千葉ロッテマリーンズに涌井選手を放出したのは間違いだったと言われるほど、結果を出してほしいと思います。
移籍して活躍が期待される選手たち