2018年ドラフト6位から彗星のごとく出現した戸郷翔征選手、春季キャンプを一軍で迎える2020年飛躍の年を予感させます。
山口俊選手との自主トレでは体重アップ、脱力投法のヒントも得て、ますます期待感が高まりますが、一方で課題も山積みです。
ここでは活躍するための条件を3つ絞り込み、戸郷翔征選手が一軍で活躍できるかを予想していきたいと想います。
戸郷翔征選手の投球
まず、戸郷選手の投球割合と球種ですが、
球種 | 投球割合 | 被打率 | 被四死 | 奪三振 | 空振率 | 見逃率 |
ストレート | 48.74% | .267 | 1 | 2 | 6.90% | 17.24% |
スライダー | 10.92% | .200 | 0 | 3 | 46.15% | 15.38% |
カットボール | 24.37% | .143 | 2 | 4 | 41.38% | 10.34% |
フォーク | 15.97% | 0.000 | 0 | 2 | 36.84% | 5.26% |
最速154キロ、平均球速が150.3キロと巨人にはいないパワーピッチャーで、ストレートの割合は投球の半分を占めています。
巨人入団前の最速が149キロだった事を考えると、1年で球速が5キロアップし、平均球速もぐっと上がってきていますので、19歳という事を考えると、まだまだ球速も伸びそうなので、ファンからしても楽しみな投手の一人でしょう。
戸郷翔征選手の変化球はかなり高速ボール
そして、第二球種にあたるカットボールですが、平均球速138.0キロをほこる高速ボールです。
メジャーでも変化球の高速化が顕著ですが、戸郷選手の変化球も140キロ近い高速ボールを操るので、ストレートとの見分けが難しい攻略の難しい球種です。
被打率.143、空振り率41.38%と圧倒的な数字を残しています。
そして、もう一つのウイニングボールがフォーク(スプリット)ですが、平均球速が135.6キロとこちらのボールも高速で、被打率.000、空振り率36.84%と圧倒的な数字を残しています。
しかし、これからは各球団のマークも厳しくなってきますので、研究されてくる可能性は十分にありますが、戸郷選手の生命線となる球種である事は間違いないでしょう。
とは言っても、スピードボールを投げられるという事は、それだけで脅威で投手のアドバンテージがありますので、攻略が難しいピッチャーである事は間違いありません。
特に、巨人には平均球速で150キロをキープできるだけの馬力のあるピッチャーは先発投手ではいませんので・・
戸郷選手は千賀滉大投手や山本由伸投手のような直球、変化球ともに高速ボールを操るピッチャーに成長する可能性を秘めています。
千賀滉大投手や山本由伸投手の投球割合
投球フォームは違いますが、同じ先発で高速ボールを操り、球界のエースに成り上がった千賀投手と山本投手の投球割合を紹介して、比較すると、
千賀滉大 | 投球割合 | 被打率 | 被四死 | 奪三振 | 空振率 | 見逃率 |
ストレート | 48.67% | .216 | 46 | 97 | 11.10% | 15.78% |
カットボール | 15.45% | .267 | 13 | 16 | 12.42% | 17.89% |
フォーク | 17.92% | .123 | 8 | 100 | 23.59% | 8.35% |
シュート | 5.63% | .296 | 5 | 5 | 4.62% | 13.87% |
スライダー | 11.48% | .160 | 2 | 9 | 7.93% | 26.35% |
カーブ | 0.81% | .600 | 0 | 0 | 8.00% | 20.00% |
千賀投手も投球割合の約50%がストレートを占め、カットボール(スライダー)が27%程度、フォークは18%程度と3もしくは4種類の球種で打者を圧倒します。
ストレートの平均球速は150キロオーバー、お化けフォークの異名を取る落差の大きいフォーク、ピッチトンネルを抜けて急激に変化する平均球速146キロ前後のカットボールは、どの球種も一級品。
ロッテの井上晴哉選手が
「僕の地元・広島の観光名所・三段峡のガケくらい落差がある」
と表現するほど、フォークの落ちは相手打者には脅威のボールです。
山本由伸 | 投球割合 | 被打率 | 被四死 | 奪三振 | 空振率 | 見逃率 |
カットボール | 20.04% | .246 | 7 | 21 | 10.54% | 10.07% |
ストレート | 30.92% | .216 | 11 | 24 | 8.19% | 18.36% |
フォーク | 18.63% | .168 | 10 | 49 | 22.67% | 6.05% |
シュート | 12.20% | .209 | 4 | 4 | 6.92% | 13.85% |
スライダー | 4.50% | .194 | 2 | 11 | 12.50% | 14.58% |
カーブ | 13.70% | .118 | 2 | 18 | 11.64% | 27.05% |
平均球速150キロ近くに迫るストレートと、平均球速145キロ前後のカットボール、フォークボールを投げ、どの球種も高速ボールなので、打者からすればお手上げ状態です。
千賀投手も山本投手も、制球力が良い方ではありませんが、どんどん力強いボールを投げ込んでくるので、バッターを圧倒してしまのでしょうが、このようなパワーピッチャーになれるのは、どの球種も高いキレとスピードがあるからこそ。
その点で言えば、戸郷投手も二人のようなピッチャーになれる可能性は十分秘めているのです。
戸郷翔征選手が一軍で活躍するための3つの条件
戸郷選手の投球内容を見た上で、千賀投手や山本投手のようなパワーピッチャーになれる可能性は十分秘めているとは思いますが、そうは言え19歳の若者で、これからのノビシロは十分だと思いますので、焦って2020年で潰れないようには注意しないといけないと思います。
このオフ、山口俊選手と自主トレを共にし、体重が4キロアップしたとニュースになっていましたが、急激に体重が増えてくると上下の身体の動きが合わない可能性があります。
また、今まで出来た動きが出来なかったり、下半身に負担がかかり過ぎて怪我をする事もありますので、キャンプ入り後も慎重に調整はしてほしいですし、首脳陣も見守ってあげてほしいと思います。
その上で、1軍で活躍するためにどうすれば良いか?を3つのポイントを考えてみました。
その1 変化球のキレ、コントロールの精度アップ
戸郷選手もコントロールを武器に勝負するタイプではなく、適度に球が荒れるのが持ち味です。
一方で、変化球は抜ける事も多かったので、よりレベルアップを目指すには変化球でストライクがいつでも取れるようにしておく必要がおきたいところです。
その2 ストレートの質を磨きどんどん押す投球を
戸郷投手は、投球割合を見ても、千賀投手のようにグイグイとストレートで押すピッチングが魅力です。
以前、故・星野仙一氏がピッチングについて語っていたのですが、
「プロに来るピッチャーなんてみんな、お山の大将で『打てるもんなら打ってみろ』ってマウンドに上がってきたヤツばかりだからね。自信を持って投げた球を粉々に打ち砕かれる。ショックはデカいわな」
とインタビューで答えていましたが、戸郷投手はプロ初勝利を挙げたと言っても、登板数は少ないですし一軍で活躍出来るかどうか、これから何枚もプロの高い壁にぶち当たる事になると思います。
今は、無意識に投げ込んで抑え込めているところから、打たれだすと自信がなくなり、思い切って攻められなくなる・・事がないように、自分のストレートを信じて投げ込み続けて欲しいと思います。
ちょっと打たれて込まれても、気持ちを切り替えて、
「打てるものなら打ってみろ」
と思ってほしいと思います。
幸い、昨年の日本シリーズで打ち込まれて、4失点を奪われてしまい試合の流れをソフトバンクに持っていかれてしまった苦い経験をしていますので・・
この時の経験を糧にしてほしいですね。
その3 脱力投法をマスターし一年間戦える体力を
最後の一つは、山口俊投手と自主トレを過ごし学んだ「脱力投法」を身につける事です。
1軍では2試合に登板のみでしたので、年間通して戦い抜けるだけの体力があるかは、まだ未知数ですが、常にフルパワーで投げていれば、どんな投手でもバテてしまいますので、良い意味で手抜きが出来るか?が大事です。
その点、今年の山口俊投手は脱力投法をマスターし、キレの良い投球を見せていましたので、戸郷選手も見習う点は多かったはずです。
本人もすでに自覚しており、
「去年は思い切り投げていたけど、あまり力を入れずにいい球がいくところを探していた。ずっと本気で投げてたら肩肘も壊れやすいので。今年は走者がいない時は、5割、6割ぐらいの力で投げたい」
とコメントしていますので、キャンプの紅白戦、オープン戦でどんな投球を披露してくれるのか、楽しみです。
以上、3つのポイントを挙げましたが、戸郷投手に山口俊選手の代わりになってほしいとは思わないですし、今年は無理は絶対にしてほしくないと思います。
筆者個人の意見ですが、前半戦はじっくりと調整し、ファームで調整するのも良いと思います。
後半戦から出てきてくれて、5勝を目標にしてくれれば、十分に戦力になってくれていると思いますし、二桁勝利は2021年にお預けで十分オッケーです。
とにかく、まだまだ心身ともに成長中の19歳だという事を忘れず、戸郷選手を長い目で育てていくプランを作って欲しいと思います。
思ったよりも、早く出てくるかも?というより開幕ローテーションもあるかもしれませんね・・キャンプ、オープン戦をチェックしていきたいと思います!
#宮崎 合同自主トレ🏃🏻♂️
ブルペン入りした #戸郷翔征 投手の剛速球を至近距離で撮影してみました📹ロングバージョンはYouTubeで公開中です⇒https://t.co/tri1rxhJDb#巨人 #ジャイアンツ #giants pic.twitter.com/iESJdIoDyz
— 読売ジャイアンツ(Giants) (@TokyoGiants) January 28, 2020
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